組み込みのマルチOSとは?意味・特徴・定義をわかりやすく解説

マルチOSとは、一つのCPUの中にOSを複数搭載する技術のことです。組み込み分野においては、マルチコアCPUにLinuxとRTOSを共存させる形で活用されています。それぞれのメリットを活用し、デメリットを補うことができます。

LinuxとRTOSを共存させるマルチOS

マルチOSとは、一つのCPUの中にOSを複数搭載する技術のことです。

近年、組み込み分野においては、マルチコアCPUにLinuxとRTOSを共存させるケースが増えています。

Linux(読み方:リナックス)とは

Linuxとは、汎用OSの一種。Linuxは、フリーかつオープンソースなOSであり、ソースコードは無償で入手できる。もともとサーバーなどオープンシステムで利用されていたが、近年では組み込みシステムで使われることも増えた。

マルチOSにより、種類の異なる2つのOSの共存が可能になります。マルチOSの特徴は、それぞれのOSのメリットや資産を有効に活用できることです。

ポイント
  • マルチOSとは、一つのCPUの中にOSを複数搭載する技術のこと
  • マルチOSにより、各OSのメリットや資産を有効に活用できる

RTOSとLinuxの違い・比較一覧表

RTOS、Linuxの違いは、以下の通りです。

RTOS Linux
ソフトウェア資産 豊富 非常に豊富
リアルタイム性能 高い 低い
サポート あり(有償OSの場合) なし
起動時間 速い 遅い

RTOSとLinuxのソフトウェア資産

RTOS Linux
ソフトウェア資産 豊富 非常に豊富

RTOS、Linuxはどちらも豊富なソフトウェア資産があります。

半導体ベンダーでは、マイコン系CPUではRTOS、プロセッサ系CPUではLinuxを中心として、標準のドライバーやサンプルソフトウェアを提供することが多いです。

RTOSとLinuxのリアルタイム性能

RTOS Linux
リアルタイム性能 高い 低い

RTOS、Linuxは、リアルタイム性能に差があります。

RTOSは、組み込みシステム向けに設計されています。このため、当然高いリアルタイム性能を保証しています。

一方Linuxは、元々PC向けに開発されている汎用OSです。このためLinuxは、組み込み機器に要求されるリアルタイム性を必ずしも保証できません。

RTOSとLinuxのサポート

RTOS Linux
サポート あり(有償OSの場合) なし

RTOS、Linuxは、サポートの有無に違いがあります。

RTOSは、有償OSの場合、通常はサポートを受けることができます。

一方Linuxは、オープンソースな無償OSのため、サポートを受けることができません。ただ、有償でサポートを受けることができる場合もあります。

RTOSとLinuxの起動時間

RTOS Linux
起動時間 速い 遅い

RTOSとLinuxは、起動時間に差があります。

RTOSは、組み込みシステム向けに設計されています。このため、短い時間で起動します。

一方Linuxは、元々PC向けに開発されている汎用OSです。このためLinuxは、RTOSと比較すると、起動までの時間は遅いです。このため、組み込みシステムで使用すると、製品化された場合に使いづらさを感じることがあります。

RTOSとLinuxのメリット・デメリット

以上のことから、RTOS、Linuxのメリット・デメリットを纏めると、以下の通りです。

RTOS Linux
メリット ソフトウェア資産が豊富
リアルタイム性能が高い
起動が早い
品質・サポート保証がある(有償OSの場合)
グラフィックスやネットワークなどのソフトウェア資産が豊富
デメリット 利用するCPUによっては半導体ベンダーからドライバーが提供されていないことがある リアルタイム性能が低い
起動が遅い
原則、品質・サポート保証がない(ただし有償サポートあり)

RTOSとLinuxをマルチOS化すると、それぞれのメリットを活用し、デメリットを補うことができます。

マルチOSのメリット

前述の通り、RTOSとLinuxをマルチOS化すると、それぞれのメリットを活用しながら、デメリットを補うことができます。

マルチOSのメリットを纏めると、以下の通りです。

  • LinuxとRTOS双方のソフトウェア資産を活用できる
  • RTOSでリアルタイム性を担保できる
  • Linuxで3Dグラフィックやネットワーク実現し、RTOS
  • モーターやセンサーの制御などのリアルタイム処理を実行できる
  • 品質・サポート保証を受けられる

マルチOSの実現方法

マルチOSの実現方法として、一般的に使用される手法としては、以下があります。

  • ハイパーバイザ方式(ハイパーバイザ型)
  • AMP方式

ハイパーバイザ方式(ハイパーバイザ型)

ハイパーバイザ方式(ハイパーバイザ型)とは、仮想化技術を用いた方式のことです。

ハイパーバイザとは

ハイパーバイザとは、コンピューターを仮想化するためのソフトウェアのこと。組み込みにおけるハイパーバイザ方式では、疑似的にコンピュータをエミュレートする環境を作り、そこにOSを搭載している。このため、シングルコアのデバイスでも実現できる。

AMP方式

AMP方式とは、各コアに異なるOSを搭載する方式のことです。

AMP(読み方:エーエムピー)とは

AMPとは、「非対称型マルチプロセッシング」を意味するAsymmetric Multi Processingの略。異なるコアの上で別々のプログラムを処理させる構成のこと。

組み込みにおけるAMP方式では、コアに対して直接OSを割り当てます。このためAMP方式は、ハード構成の自由度が高く、ハイパーバイザよりも軽量な実装が可能になります。

ポイント
  • ハイパーバイザ方式(ハイパーバイザ型):仮想化技術を用いた方式
  • AMP方式:各コアに異なるOSを搭載する方式

Linux+RTOSソリューション一覧

主なLinux+RTOSのマルチOSソリューションは、以下の通りです。

  • Ubiquitous QuickBoot SafeG Pack
  • EMDuo
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

LinuxとRTOSの共存ソリューション「μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux」

μC3+LinuxはマルチコアCPUにLinuxとRTOSを共存させ、OS間の通信を可能にするソリューションです。

種類の異なった2つのOSを共存させることで、RTOSのリアルタイム性能とLinuxが持つ豊富なソフトウェア資産を有効に活用することができます。

異なったタイプのマルチコアCPUに対応
ホモジニアス(同一プロセッサ・コアによる構成)ヘテロジニアス(異なるプロセッサ・コアによる構成)の両方に対応しています。
メーカー提供のLinuxディストリビューションに対応
CPUベンダーが標準でサポートするLinuxに対応し、アプリケーションの開発が迅速にできます。
OS間通信をサポート
メッセージ形式のAPI(RPMsg)を使って、OS間の通信を容易に実現できます。
OpenAMP仕様を採用
Multicore Associationによって標準化されたOpenAMPの仕様に対応しています。
RTOSによる高速ブート
μC3を先に起動することで高速起動ができます。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

資料ダウンロード(無料)

μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ