【ルネサス】SH2A-FPU(SuperH RISC engine ファミリ)とは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

SH2A-FPUとは、ルネサスエレクトロニクス(以下、「ルネサス」)のハイエンドマイコンです。SH2A-FPUは、多彩な周辺機能を内蔵したSH-2Aコアを搭載しています。SH2A-FPUは、SH-2A CPUにFPU機能を追加したものです。

SH2A-FPUシリーズの製品ライン

  • SH7203シリーズ
  • SH7205シリーズ
  • SH7216シリーズ
  • SH7231シリーズ
  • SH7239シリーズ
  • SH7262シリーズ
  • SH7263シリーズ
  • SH7264シリーズ
  • SH7265シリーズ
  • SH7266シリーズ
  • SH7267シリーズ
  • SH7268シリーズ
  • SH7269シリーズ
  • SH726Aシリーズ
  • SH726Bシリーズ
  • SH72A0シリーズ
  • SH72A2シリーズ
  • SH72AWシリーズ
  • SH72AYシリーズ

SH2A-FPUシリーズの仕様

Bit Size Program Memory(KB) RAM(KB) Lead count(#) Supply Voltage(V)
SH7203 32 0 80 240 3 – 3.6
SH7205 32 0 112 272 3 – 3.6
SH7216 32 512,768,1024 64,96,128 176 3 – 3.6
SH7231 32 768 32 272 3 – 3.6
SH7239 32 256,512 32,64 120 3 – 3.6,4.5-5.5
SH7262 32 0 704,1088 176 3 – 3.6
SH7263 32 0 80 240 3 – 3.6
SH7264 32 0 704,1088 208 3 – 3.6
SH7265 32 0 112 272 3 – 3.6
SH7266 32 0 1600 144 3 – 3.6
SH7267 32 0 1600 176 3 – 3.6
SH7268 32 0 2624 208 3 – 3.6
SH7269 32 0 2624 256,272 3 – 3.6
SH726A 32 0 1344 120 3 – 3.6
SH726B 32 0 1344 144 3 – 3.6
SH72A0 32 256,512 32,64 64 3.3-5.5
SH72A2 32 256,512 32,64 100 3.3-5.5
SH72AW 32 512,768 96 176 4.5-5.5
SH72AY 32 512,768 96 176 4.5-5.5

出典:SuperH RISC engine ファミリマイコン

SuperH RISC engine ファミリとは

SuperH RISC engine ファミリは、ルネサス社製のハイエンドマイコンです。

SuperH RISC engine ファミリが搭載しているコアは、以下の通りです。

  • SH-2A:多彩な周辺機能を内蔵
  • SH-4A:高速データ処理が可能

こちらの記事では、SH-2Aを搭載したシリーズを紹介します。

SH2A-FPUシリーズの特長

SH2A-FPUシリーズの特長は、以下の通りです。SH2A-FPUは、SH-2A CPUシリーズにFPU機能を追加したものです。

  • 周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現
  • 旧シリーズの約3.5倍の性能
  • 最短6クロックの割り込み応答
  • SH2A-FPUにFPU機能を追加

SH-2A CPUについては、以下の記事をご覧ください。

SH-2A CPU(SuperH RISC engine ファミリ)とは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

【特長1】周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現し、コストを低減

SH‐2A FPUは、CPUのアーキテクチャとして以下の2つを採用しています。

  • スーパースカラ
  • ハーバードアーキテクチャ
スーパースカラ

SH2A-FPUは、スーパースカラを採用しています。

スーパースカラとは

スーパースカラとは、CPUを高速化するアーキテクチャの一つ。一度に複数の命令を読み込み、同時に実行できる。パイプライン処理を複数並列させて実現している。

パイプライン処理とは

パイプライン処理とは、コンピュータの高速化を図る技術のひとつ。パイプライン処理では、1つの命令を独立したステージに分割し、各ステージを並列的に実行する。これにより複数の命令がオーバーラップされ、処理が高速化される。

このためSH2A-FPUは、1クロックで最大2命令の並列実行を可能にします。

ハーバードアーキテクチャ

またSH2A-FPUは、ハーバードアーキテクチャを採用しています。

ハーバードアーキテクチャとは

ハーバードアーキテクチャとは、バスアーキテクチャの一つ。命令用とデータ用のバスを分ける構造を取っている。これにより、CPUが命令をフェッチしている間でも、データバスを用いてデータにアクセスが可能になる。

従来のSuperHシリーズでは、命令用とデータ用のバスを兼用していました。SH2A-FPUではハーバードアーキテクチャの採用により、命令取込みとデータアクセスの競合が発生しません。これにより、メモリアクセスが連続する演算においても、大幅な性能低下は起こりません。

【特長2】旧シリーズの約3.5倍の性能

SH2A-FPUは、200MHz動作時に480MIPS動作します。

MIPS(読み方:ミップス)

MIPSとは、CPUの処理速度を表す単位の一つ。MIPSとは、「毎秒100万回の命令」を意味する「Million Instructions Per Second」の略。1MIPSのCPUは、毎秒100万回の命令を処理できる。

旧シリーズのSH-2は、最大動作周波数80MHzで104MIPSの処理性能であるため、SH‐2A FPUは、旧シリーズの約3.5倍の処理性能を実現しています。

動作周波数については、以下の記事をご覧ください。

マイコン・CPUの動作周波数(クロック周波数)とは?初心者向けに意味・定義をわかりやすく解説

【特長3】最短6クロックの割り込み応答

SH2A-FPUは、レジスタの情報を格納するための専用レジスタを内蔵しています。

レジスタ

レジスタとは、演算や実行状態の保持に用いる記憶装置。高速に読み書きできるのが特徴。

通常のCPUでは、割り込みイベントが発生すると、1.割り込み処理で使用する汎用レジスタの値をソフトウェアによる処理でスタックメモリに格納、2.割り込みイベントに対応したアプリケーションの実行、という手順で処理を行います。

これに対し、SH2A-FPUでは、専用レジスタを内蔵し、ソフトウェアではなくハードウェアで退避を行います。このため、割り込みイベント発生時に、高速にアプリケーションプログラムの切り替えを実行できます。

また、旧シリーズでは、割り込みイベントが発生してから実際のアプリケーションプログラムを実行開始するまで、最小37サイクルが必要でした。これに対しSH2A-FPUは、6サイクルで実行できます。

また、上記3つの特長は、SH-2A CPUにも共通です。

【特長4】SH2A-CPUにFPU機能を追加

既に述べた通り、SH‐2A FPUは、SH-2A CPUにFPU機能を搭載したものです。

FPU(読み方:エフピーユー)とは

FPUとは、「浮動小数点演算装置」を意味するFloating-Point Unitの略。浮動小数点数の演算に特化した演算装置。FPUのうち、32ビットの浮動小数点で表現するものを「単精度FPU」、64ビットのものを「倍精度FPU」と呼ぶ。

SH2A-CPUでは、200MHzの時、300MIPSで動作します。

これに対し、SH2A-FPUでは、200MHzの時、480MIPSで動作します。このように、SH2A-CPUに比べ、SH2A-FPUにはFPUが追加され、高性能化しています。

SH2A-FPUシリーズの入手方法

SH2A-FPUシリーズは、下記のルネサスの特約店・取扱店や、オンラインショップなどで購入できます。

SH2A-FPUシリーズの開発環境

SH2A-FPUシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • High-performance Embedded Workshop
  • IAR Embedded Workbench
  • 統合開発環境MULTI

SH2A-FPUシリーズの評価ボード

SH2A-FPUシリーズの評価ボードは、以下の通りです。

搭載MPU 特徴 対象 データシート
Starter-Kit-Plus SH7203、SH7216、SH7264、SH7269 LCDディスプレイモジュール、接続ケーブル、クイックスタートガイドなどを同梱 すぐに開発をスタートしたい方 SH7203-Starter-Kit-Plusのデータシート

SH7216-Starter-Kit-Plusのデータシート

SH7264-Starter-Kit-Plusのデータシート

SH7269-Starter-Kit-Plusのデータシート

R0K572167C001BR SH7216 LANコネクタ、USBシリーズBコネクタを実装

計測機器を用いた周辺デバイスとのタイミング評価が可能

EthernetやUSB、計測機器を用いて評価したい方 R0K572167C001BRのデータシート

Starter-Kit-Plus

Starter-Kit-Plusは、ルネサス社製のルネサスマイコン向け開発キットです。

Starter-Kit-Plusには、評価用のCPUボードのほか、LCDディスプレイモジュールや、接続ケーブル、クイックスタートガイドなど、開発に必要なものが同梱されています。

このためStarter-Kit-Plusは、「すぐに開発をスタートしたい」という方に最適な開発キットです。

SH7203-Starter-Kit-Plusの価格・購入方法

SH7216-Starter-Kit-Plusの価格・購入方法

SH7264-Starter-Kit-Plusの価格・購入方法

SH7269-Starter-Kit-Plusの価格・購入方法

R0K572167C001BR

R0K572167C001BRは、ルネサス社製の評価ボードです。

R0K572167C001BRは、LANコネクタを実装しています。このため、Ethernetを使用した評価が可能です。

また、USBシリーズBコネクタを使用した評価や、計測機器を用いた周辺デバイスとのタイミング評価も可能です。

このためR0K572167C001BRは、「EthernetやUSB、計測機器を用いて評価したい」という方に最適な評価ボードです。

R0K572167C001BRの価格・購入方法

SH2A-FPUシリーズの対応OS

SH2A-FPUシリーズに対応している主なOSは、以下の通りです。

  • HI7000/4
  • HI7200/MP
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。

μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。

ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。