IoT

近年、モノがインターネットで通信するIoT(Internet of Things)に注目が集まり、さまざまな業界で導入され始めています。IoTが広がることで、「作業者負担」「労働力不足」などの課題解決に繋がるのではないかとの期待もされています。

この記事では、IoTに適した通信技術として注目されているLPWAについて紹介します。

LPWA(Low Power Wide Area)とは

LPWA(Low Power Wide Area)は長距離データ通信を低消費電力で実現する無線通信技術です。

後ろに「Network」を付けてLPWAN(Low Power Wide Area Network)と呼ばれることもあり、IoTやM2M(Machine to Machine)に適した通信方式です。

参考:株式会社NTTPCコミュニケーションズ「LPWA(LPWAN)とは?IoT時代の通信技術を紹介」

LPWAの特長

【特長1】長距離通信

LPWAは低速の狭帯域を利用し、1kmを超える長距離のデータ通信が可能です。遠隔操作・遠隔監視目的で一定の間隔をおいてデータを送受信する際などに適しています。

【特長2】低消費電力

LPWAはIoTデバイスでの利用を想定した、低消費電力の通信規格です。デバイス間のデータ通信速度を抑え、長時間の稼働を実現します。

バッテリー交換などのメンテンナンス回数を抑えられるため、人がアクセスしづらい場所へのIoTデバイス配置で強みを発揮します。

【特長3】低コスト

電力や速度を抑えた通信をおこなうため、IoTデバイスを凝った仕様にする必要がありません。そのため、IoTデバイス自体の価格や、導入・運用・メンテナンスにかかるコストを抑えることができます。

参考:株式会社日新システムズ「LPWAとは」
参考:株式会社NTTPCコミュニケーションズ「LPWA(LPWAN)とは?IoT時代の通信技術を紹介」

LPWAと他通信規格の比較

「LPWA」以外にも複数の通信規格や方式があります。普段、「3G/4G/LTE」「5G」「Wi-Fi」「Bluetooth」「NFC」「RFID」といった通信について耳にすることも多いのではないでしょうか。

各通信規格・方式の特長を以下で紹介します。

通信規格・方式
  • LPWA: 広域 / 消費電力小・低速・低コスト
  • 3G/4G/LTE: 広域 / 消費電力大・高速・高コスト スマートフォンなどで利用される通信規格
  • 5G: 広域 / 高速・低コスト 4G(LTE)の次世代通信として、IoTの普及に必要な通信規格
  • Wi-Fi: 狭域 / 消費電力大・高速・高コスト 家庭用無線ルーターなどで普及している無線通信規格
  • Bluetooth: 狭域 / 消費電力小・低速・低コスト 近距離デバイスを繋ぐ無線通信規格
  • NFC: 狭域 / 消費電力小・低速・低コスト スマホ決済システムなどで利用される非接触通信
  • RFID: 狭域 / 消費電力小・低速・低コスト 衣類タグなどで利用される非接触情報識別通信

参考:株式会社NTTPCコミュニケーションズ「LPWA(LPWAN)とは?IoT時代の通信技術を紹介」

LPWAは、LTEと同様に広域通信が可能です。一方、LTEと比較して通信速度は低速であるため、その分低消費電力・低コストを実現できます。

日本における主要なLPWAの種類

LPWAのなかにも、複数の無線通信規格が存在します。

大きくは、免許取得および登録を済ませた大手通信事業者のLTE基地局を利用するライセンスバンドと、無線局免許が不要のアンライセンスバンドに分けられます。

主要規格の特長については以下の通りです。

ライセンスバンド アンライセンスバンド
規格名 NB-IoT LTE-M LoRaWan Sigfox
周波数帯 LTE
(700MHz~3.5GHz)
LTE
(700MHz~3.5GHz)
Sub-GHz帯
(920MHz-928MHz)
Sub-GHz帯
(920MHz)
通信速度 上り:62kbps
下り:21kbps
上り:1Mbps
下り:800kbps
上り/下り
250bps~50kbps程度
上り:100bps
下り:600bps
最大伝送距離 約30km 約10km 約15km 約50km
消費電力 高い 高い 低い 普通
コスト 普通 高い 低い 普通
想定ユースケース 電力やガスの使用量を測定するスマートメーターや、アプリによって駐車スペースの出庫管理を行うスマートパーキングなど 通話機能を備えたエレベーターや配送事業におけるトラッキングなど 長期運用を想定したIoTデバイス 長距離通信を想定したIoTデバイス
特長 日本ではソフトバンクがサービス発表
携帯の基地局、空き領域を利用
日本ではドコモとKDDIがサービス開始
携帯の基地局を利用
グローバルでオープンな規格
LoRaアライアンスで規格を協議、アップデート
フランスのSigfox社独自規格、1国1社縛り
日本では京セラ子会社が推進

引用(周波数帯、最大伝送距離箇所):株式会社NTTPCコミュニケーションズ「LPWA(LPWAN)とは?IoT時代の通信技術を紹介
引用・参考(通信速度・想定ユースケース箇所):ユーピーアール株式会社「IoTソリューション導入事例」
参考(コスト箇所):株式会社バディネット「LPWAの規格一覧と比較表」
引用(特長箇所):センスウェイ株式会社「LPWAとは?」

LPWAの活用事例

これまでの通信規格では長距離通信と低消費電力の両立に課題がありました。

例えば、Bluetoothは小型化で使いやすい特徴を有しながらも通信距離が短く、制約も多い無線通信規格でした。また、一般消費者に浸透している無線通信規格Wi-Fiも消費電力や利用コストが高く、複数の周波数帯が混在すると、それぞれのデータ通信を妨害するなどの問題がありました。

その点、LPWAは長距離通信と低消費電力を両立する規格として注目され、2022年11月現在では、一般消費者が日常で使用する家電や産業サービスなどで幅広く活用されています。

LPWAの特長を生かしたた活用事例
  • 圏外になりやすく回線も引き込みにくい、山奥の建設現場や採掘現場等でのモニタリング
  • 無線ネットワークを設置する方法が限られる、洋上の水温監視、池や河川の推移監視
  • ケーブルを設置できない農場や牧場などのでの遠隔監視・遠隔制御
  • 途中で充電しづらい、メーカーからエンドユーザまでの商品流通追跡

参考:ユーピーアール株式会社「IoTソリューション導入事例」

人がアクセスしづらい場所での利用

これまで、公衆無線ネットワークが整備されていない郊外・河川・海・森林などにおけるIoT導入では、有線ネットワークを準備する必要がありました。

しかし、回線の引きにくさ・ネットワーク設置方法の選択肢の少なさ・費用面などが理由で、山奥・海や河川の監視においてはIoT導入が進んでいませんでした。

そこで注目されているのがLPWAです。免許不要で10kmほどの長距離通信が可能で、使いたい場所で使える通信規格として、IoTとともに広がりが期待されています。

参考:ユーピーアール株式会社「IoTソリューション導入事例」

消費電力と通信速度

LTE、4G、5G、Wi-Fiなどの通信規格と比べると、LPWAは低速です。しかし、通信速度と消費電力は比例の関係にあるため、LPWAは「消費電力を抑えながら長距離通信ができる規格」という見方ができます。

LPWAが利用されるIoT/M2Mでは通信がシンプルなため、扱うデータも軽量です。LPWAの通信速度が懸念されることはほとんどありません。低消費電流によってバッテリーの持ちを長くし、メンテナンス工数を減らせるなどのメリットのほうが大きいといえるでしょう。

参考:センスウェイ株式会社「LPWAとは?」

LPWAによるコストダウン

IoTでは、インターネットで繋がるモノが数百台~数千台に及ぶ場合があります。その際、LPWAを利用しない無線通信契約では通信料が100万円/月を超えるケースもあり、コスト面で課題がありました。

しかし、一度に大量のデータ通信をおこなう必要がない家庭用ガスや電力メーターの監視、テレマティクスなどでは、速度を抑えた通信契約にしてコストを見直すことが可能です。従来の通信規格とLPWAの場合で導入コストと運用コストを比較すれば、かなりのコストダウンが見込めるでしょう。

以上から、LPWAは「通信可能エリア」「消費電力と通信速度」「構築/運用コストと収益」の3つのバランスを兼ね備えた、更なる活用が期待される通信規格です。

参考:ユーピーアール株式会社「IoTソリューション導入事例」

まとめ

この記事では、LPWAを中心に通信規格の紹介をしてきました。

近距離デバイスを繋ぎたい場合は「Bluetooth」、高速性も重視するなら「5G」など、通信規格にはそれぞれ特長があります。採用する通信規格を検討する際は、下記3つを念頭におき、それぞれ特長を踏まえて決めることをおすすめします。

通信規格を選ぶ際のポイント

①通信エリア
環境により、各通信規格の通信のしやすさに差が出ます。使いたい場所で通信させることができるかや、通信させる場合のハードルを確認しましょう。

②電力と通信速度のバランス
消費電力と通信速度は比例します。使いたい場所で必要な電力供給が得られるかを確認しましょう。

③構築/運用コストと収益のバランス
技術的には実現できても、コストがかかりすぎる場合があります。導入により収支のバランスが崩れないか、現実的に実用できるのかなど、事前にコストや収益を算出しましょう。

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