アグリテック

労働人口減少などの社会問題が懸念される昨今、課題解決策のひとつとしてアグリテックに注目が高まっています。

本記事では、農業における課題やアグリテックがもらたすメリットを紹介します。また、アグリテックを支える技術についても触れますので、ぜひご覧ください。

アグリテックとは

アグリテックは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。

現代の農業は、少子高齢化による人材不足や食料自給率低下といったいくつかの課題があります。

農業の課題を、AI、IoT、ドローン、ビッグデータなど、ITを活用して解決する取り組みをアグリテックと呼びます。

「アグリテック」以外に「スマート農業」という表現を耳にされている方も多いかもしれません。

農林水産省によると、スマート農業は「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」とされており、アグリテックと同義と考えて問題ありません。

出典:農林水産省「スマート農業の展開について」

農業の課題

まずは、農業が抱えている課題を見ていきましょう。

農業従事者の減少

近年、農業従事者の減少が課題になっています。

さまざまな業界で人材不足が叫ばれていますが、農業では基幹的農業従事者の平均年齢が60歳代後半と高く、高齢の農業従事者が引退すると、減少に拍車がかかると予想されます。

農林水産省の農業労働力に関する統計では49歳以下の新規就農者数は平成27年から令和3年まで、毎年減少しています。

出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」

農業に興味を持つ若者がいても、ほかの業界と比べて収入や長時間労働の面で大変な印象があり、その点がネックになっている可能性があります。

技術やノウハウの継承問題

農業従事者が持つ栽培技術や経営ノウハウを後継者に伝えるためにはかなりの手間がかかります。

従来はノウハウが口頭や実践で伝えられるのみで可視化や記録がされていなかったりと、継承漏れが発生してしまう問題がありました。

そしてこのような状況は、農業に興味を持つ人の参入のハードルになっていました。

食料自給率の低下

農林水産省によると、カロリーベースでの日本の食料自給率は昭和40年の73%に対して、令和元年では38%まで低下しています。

令和2年3⽉に策定された基本計画において、令和12年度にはカロリーベースの食料自給率を45%にするという目標を掲げています。国としても課題意識を持っていると言えます。

出典:農林水産省「日本の食料自給率」

アグリテック導入のメリット

アグリテック

アグリテックを導入することで、さまざまな業務改善や課題解決が期待できます。

省人化・効率化

これまで人間が行っていた作業をロボットが代替することで、作業時間を抑えることができます。

作物の状態をAIが判断し、ロボットが適したタイミングで自動で収穫します。人間とは違い24時間体制で稼働でき、長時間稼働によって判断力が低下することもなく、効率的な収穫ができます。

また、収穫の場面以外でも省人化に役立ちます。気候や作物の栄養状態に応じてシステムが自動で水や肥料を散布できるようにすれば、監視や重労働の負担を減らせます。

従来、農業従事者は作物をこまめにケアするため、休みなく働き続けなければならない印象がありました。しかし、アグリテックによって作業負担を軽くすることで、長時間労働からの開放など、新しい働き方を実現することも可能です。

ノウハウの継承

上述したように、従来はノウハウや技術の可視化がされてにくい状況であり、そのことが継承のハードルになっていました。

アグリテックを導入して培った豊富な知識や経験をデータ化すれば、後継者への継承が正確にかつ効率よく行えます。新たに農業を始める人であっても作物を栽培しやすくなり、安定的な収穫ができます。収穫が安定すれば経営安定化に繋がり、農業従事者の定着も進むと考えられます。

食料自給率の改善

過去の災害や天候データを基に対策を行う、タイミングを逃さずに確実に作物を収穫するなど、システムを活用することで収穫量の向上や安定化が実現します。

国内の供給量を安定的に増やすことができれば、海外からの輸入に依存する状況を改善できます。

環境問題の改善

自給自足率を向上させて作物の長距離運搬を控えるなど、アグリテックによってガソリン消費量や二酸化炭素排出量を抑えることができます。

また、データを活用して無駄なく効率的に化学肥料や農薬を散布することでも、環境負荷低下に貢献できます。

アグリテックを支える技術

アグリテックの推進には、それを支える技術や環境が必要になります。この章では、一部を紹介します。

エッジコンピューティング

エッジコンピューティングとは、コンピュータネットワークのエッジ部分でデータを処理するネットワーク技術です。

予めエッジ側で処理されたデータをクラウドに送信するため、通信遅延やネットワーク負荷を抑えることができ、解析したいデータが大きい画像や映像の場合などのリアルタイム処理にも適しています。

例えば、農場に複数のセンサーを設置し、天候、温度、湿度、日照量、土壌の水分量といった膨大なデータを分析・活用し、作物が必要とする水分や肥料の量を計算して自動で与えることも可能です。

他にも、各センサーで取得するデータを基に最適な収穫日の予測を行なったり、AIや動画解析技術を用いて作物収穫量の予測精度を向上させている企業もあります。

画像や映像を扱ってシステムに判断させたいシーンでは、エッジコンピューティングによるローカル処理を検討してみましょう。

エッジコンピューティングに関する記事「エッジコンピューティングとは?特長や利用例、クラウドコンピューティングとの関係性を紹介」もご用意しています。ぜひご覧ください。

Wi-Fi HaLow™

Wi-Fi HaLow™(ワイファイ ヘイロー)は、伝送距離の長さや省電力性などの特長を有し、特にIoTの通信システムとしての幅広い活用が期待される新しいWi-Fi規格です。

例えば、鳥獣捕獲の確認や対応にかかる工数の削減にも寄与します。

動物によって農地が荒らされる等の鳥獣被害が続出している場所では、農業の被害防止に向け、鳥獣捕獲用の罠を設置して見回りが実施されています。

従来、動物が罠にかかった後は、その獲物に応じた道具を用意して処理をする必要があり、まずは現場に行って罠にかかった動物を確認し、自宅まで道具を取りに戻るといった手間が発生していました。

Wi-Fi HaLow™を活用することで、伝送距離の広さを生かして獲物が罠にかかったかどうかを麓から検知し、高速スループットによって精細な画像からどんな動物が罠にかかったのかを識別することができます。

Wi-Fi HaLow™については記事「Wi-Fi HaLow™とは?特長や920MHz帯を利用した事例を紹介」でも紹介しています。ぜひご覧ください。

まとめ

技術の進歩が、従来の農業の問題を解決する糸口になり始めています。

国内外でさまざまな実証実験やビジネス創出が行われており、今後も新しいサービスが生まれ、業務改善も進んでいくと予想できます。ぜひ注目していきましょう。