UWBとは?メリットや留意点、活用事例を紹介

長い歴史があるにもかかわらず、普及には至っていなかったUWB。この無線通信が再び注目され始めています。

この記事では、UWBについて特長や活用例を交えて紹介します。

UWBとは

UWBとは「Ultra Wide Band」の略で、超広帯域無線通信のことです。

1960年代から軍事用レーダー技術として研究が進められ、2002年に米国連邦通信委員会(FCC)の認可が降りて民生利用が開始されました。超高速通信ができ、他の無線通信規格からの干渉も少ないなど、多くの利点があります。

長い歴史を経ているUWBですが、規格化時の作業難航などがあり、対応する製品は限られていました。

そんな状況の中、2019年5月に日本での屋外利用が解禁され、改めてUWBが注目されています。また、2019年9月にはアップル社がUWBを搭載した製品を発表し、世界的にも活用の動きが進んでいます。

参考:株式会社マイナビ プラスデジタル「「UWB」とは? – いまさら聞けないスマートフォン用語」
参考:株式会社リックテレコム BUSINESS NETWORK「UWBに世界が注目する理由 スマホ/クルマIoTの本命に!?」

UWBのメリット

位置情報

メリット1:高速通信

UWBは、近距離通信において数百Mbpsの高速通信が可能です。

メリット2:正確な位置測定の実現

短いパルスを使用するため、マルチパスフェージングによる影響を受けにくく、正確かつ瞬時に位置情報を取得することができます。

メリット3:低消費電力

送信出力が-41.3dBm/MHz以下と非常に低く制限されているため、WiFiやBluetoothなどの無線送信機に比べて消費電力を抑えられます。

UWBの留意点

留意点1:屋外利用の制約

UWBは屋外利用に制限があります。

これまで、日本ではUWBが利用できる場所は屋内に限定されていました。その後、無線通信を使用するアプリケーションへのニーズが高まったことで2019年5月にハイバンドについては屋外利用が可能となるよう制度化がなされましたが、無線装置の使用周波数によってはハイバンドでも制限がかかる可能性があるとされています。

また、2023年1月時点では、ハイバンドの高帯域では引き続き屋外利用が禁止されています。

参考:総務省 電波利用ホームページ「UWB無線システムの屋外利用時の運用制限について」

留意点2:対応機器が少ない

屋外利用の制限があったこともあり、UWBを採用する製品は、同じく近距離無線通信をおこなうBluetooth対応の製品と比べて少ない状況です。

UWBの活用事例

AirTag

アップル社が2021年4月に発表した紛失防止タグ「AirTag」にはUWBが使用されています。

AirTagが近くにある時は、高精度で位置を測定できる性能を活かし、AirTagまでの距離と進む方向を表示してiPhoneが正確な場所まで持ち主を案内してくれます。

もし探し物が遠くにある場合は、AirTagの近くにあるネットワーク上のデバイスが検知できるようにBluetooth信号を送信します。信号を受け取ったデバイスはAirTagの位置情報をiCloudに送信し、持ち主はアプリのマップ上で確認できます。

Bluetoothを使っておおよその位置を把握し、UWBによって高い精度で場所を測定する仕組みです。

参考:Apple Inc.「AirTag」

倉庫内ナビゲーションシステム

株式会社サトーと株式会社シーイーシーが共同開発した倉庫内物流ナビソリューション「Visual Warehouse(ヴィジュアル ウェアハウス)」では、UWBを活用して倉庫内での作業品質や効率を向上させています。

屋内に取り付けた測位機器と作業員に付けたUWBタグによって、作業員は商品が保管されている場所を簡単に把握し、目的の場所までスムーズに移動できます。

これまで課題になっていた作業員ごとの作業精度のばらつきを改善したり、実現が難しかったフリーロケーション管理を可能にしたりなど、大きな業務改善のきっかけになっています。

参考:サトーホールディングス株式会社「物流業界初!3Dマップと音声ナビを使った倉庫内ナビゲーションシステム「Visual Warehouse™」を開発」
参考:サトーホールディングス株式会社「新晃工業株式会社様 事例 屋内位置測位技術で、作業動線の可視化を実現」

ケアが必要な方への見守り機能

医療福祉施設の入居者にUWB技術を利用したシステムを活用いただくことで、呼吸、心拍、姿勢、転倒などの状態を施設担当者が検出できるようになり、異常事態が起った際は迅速に対応することができます。また、徘徊して施設の外に出てしまいそうになる方へのケアもしやすくなります。

SMK株式会社は資本業務提携先であるイスラエルのEchoCare Technologies Ltd.が開発した「電波式見守りシステム」を活用して、浴室内事故の課題解決に向けた動きを進めています。

お湯の揺れなど、浴室内特有のノイズがある環境下でも高い検知力を実現し、浴室内で転倒や水没などを起こして危険な状態になった場合はアラートを発します。画像認識は不要なため、利用者のプライバシーを保護したシステムであることも特長です。

参考:SMK 株式会社「SMKとイスラエルEchoCare社、電波式見守りシステムで浴室内の事故を低減へ」