【TI】AM62xシリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

AM62xシリーズは、テキサス・インスツルメンツ社(以下TI社)のプロセッサです。AM62xシリーズは最大4つの Arm®Cortex®-A53を搭載し、最大1.4GHzで動作します。これに加えてサブコアとしてArm®Cortex®-M4F、3D GPUを搭載したバリエーションもあり、ディスプレイやカメラなどの画像処理に適しています。また省電力モードより、電池駆動など限られた電力での動作にも対応しており、同社のPMIC(Power Management IC)との接続方法の資料が充実しています。

AM62xシリーズの仕様

AM625x
AM625-Q1x
AM623x AM620-Q1x
Arm® Cortex®-A53搭載数 1,2,4 1,2,4 1,2,4
最大動作周波数(MHz) 1400
(T Grade)
サブMCU Arm® Cortex®-M4F
3D GPU ×
ディスプレイサブシステム 1 x DPI / 1x LVDS ×

出典:テキサス・インスツルメンツ「AM625」「AM625-Q1」「AM623」「AM620-Q1」「AM62x

AM62xシリーズについて


ここからは、AM62xシリーズについてさらに詳しく紹介していきます。

TI Arm®ベース・プロセッサとは

Arm®ベースの各種アプリケーション・プロセッサで構成された TI の幅広い製品ラインアップを活用すると、車載、産業用、IoT デバイス向けに多様で効率的なエッジ・コンピューティング性能を実現できます。TI が採用している SoC (システム・オン・チップ) アーキテクチャは、消費電力、サイズ、重量、コストなどの重要なシステム・リソースを犠牲にせずに、高性能を実現します。ハードウェア、オープン・ソース・ソフトウェア、各種ツールで構成された TI の開発プラットフォームを活用すると、開発中の製品を短期間で市場に投入できます。

引用:Arm® ベースのプロセッサ

AM62xシリーズは、TI Arm®ベース・プロセッサの1つです。

TI Arm®ベース・プロセッサは、産業用から一般用まで様々な用途で使用できる、シリーズが用意されています。

SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは

SoCとは、プロセッサの種類の一つで、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。

SoCについてさらに詳しい内容を知りたい場合は、以下のページでご確認ください。

半導体のSoC(システムオンチップ)、システムLSIとは?定義・意味・特徴をわかりやすく解説

TI Arm®ベース・プロセッサのラインアップ

ATI Arm®ベース・プロセッサの製品ラインは以下になります。

  • AM62xシリーズ: Arm® Cortex®-A53を搭載した一般用途/分析用途向け
  • AM57xシリーズ: Arm® Cortex®-A15を搭載した一般用途向け
  • AM437xシリーズ: Arm® Cortex®-A9を搭載した一般用途向け
  • AM335xシリーズ: Arm® Cortex®-A8を搭載した一般用途向け
  • OMAPL138 DSPシリーズ: Arm®9を搭載した一般用途向け
  • TDA4VMシリーズ: Arm® Cortex®-A72を搭載した分析用途向け
  • DRA829シリーズ: Arm® Cortex®-A72を搭載したネットワーク向け
  • DRA821シリーズ: Arm® Cortex®-A72を搭載したネットワーク向け
  • AM65xシリーズ: Arm® Cortex®-A53を搭載したネットワーク向け
  • AM64xシリーズ: Arm® Cortex®-A53を搭載したネットワーク向け

出典:Arm® ベースのプロセッサ

AM62xシリーズのラインアップ

AM62xシリーズのラインアップの製品ラインは以下になります。

  • AM625:エッジAIとフルHDデュアル・ディスプレイを搭載したヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)向けのSoC
  • AM625-Q1:安全機能を内蔵した車載ディスプレイ向けのSoC
  • AM623:物体検出機能とジェスチャ認識機能搭載、IoTゲートウェイ向けのSoC
  • AM620-Q1:車内監視システム、ネットワーク、V2Xシステム向けの安全機能を内蔵した車載システム向けのSoC

出典:AM62x

エッジAI(読み方:エッジエーアイ)とは

エッジAIとは、IoT機器に搭載されている人工知能のことを指す。端末そのものに搭載されるので、スピーディなデータ処理ができるのが特徴。スマートカメラや監視システムでの動体検出や顔認識、自動運転車での障害物検出と運転支援など様々な場面で利用される。

エッジAIについてさらに詳しい内容を知りたい場合は、以下のページでご確認ください。

組込みシステムにおけるエッジAIとは?AIの概念やエッジ処理の特長を紹介

HMI(読み方:ヒューマン・マシン・インターフェイス)とは

HMIとは、人と機械との間で情報や指示を交換するための技術や方法を指す。例としては、タッチパネルや音声認識、物理的なスイッチやボタンなどがある。

V2Xシステム(読み方:ブイ・ツー・エックス・システム)とは

V2Xシステムとは、自動車と周囲の環境やモビリティの安全性を向上させるためのシステム。「車と何か」を意味する、「Vehicle to Everything(ビークル・ツー・エブリシング)」の略。V2Xは代表的なもので、V2P(Vehicle to People)、V2I(Vehicle to Infrastructure)、V2V(Vehicle to Vehicle)、V2B(Vehicle to Building)、V2N(Vehicle to Network)、V2H(Vehicle to Home)などがある。

AM62xシリーズとは

低コストの AM62x Sitara™ MPU アプリケーション・プロセッサ・ファミリは、Linux® アプリケーション開発向けに構築されています。スケーラブルな Arm® Cortex®-A53 の性能と、デュアル・ディスプレイ・サポートや 3D グラフィックス・アクセラレーションなどの組込み機能に加えて、広範なペリフェラル・セットを搭載する AM62x デバイスは広範な産業用および車載用アプリケーションに適しており、インテリジェントな機能と最適化された電源アーキテクチャも提供します。

引用:AM625

AM62xシリーズは、Arm®Cortex®-A53を搭載したマイクロプロセッサファミリです。LinuxとAndroid向けに製作した製品を展開しています。産業用HMIや車載システムの使用に適しています。

【特長1】低消費電力

AM62xシリーズには、デバイス・パワーマネージャによってサポートされる、複数の低消費電力モードが搭載されています。同等の製品と比較すると最大50%の電力が削減できます。

また、単3電池を使用するアプリケーションを1000時間以上動作できるのも魅力です。

【特長2】高速インターフェース

AM62xシリーズには、2つの外部ポートに対応している統合イーサネット・スイッチやUSB2.0ポート2つを搭載して、高速インターフェースを実現します。

【特長3】マルチメディア接続

AM62xシリーズには、ディスプレイサブシステム、3D GPU、MIPI D-PHY搭載4レーンのカメラ・シリアル・インターフェイスのマルチメディアに接続対応しています。カメラの接続や、フルHDのディスプレイを最大2台接続できます。

MIPI DPHY(読み方:ミッピーディーファイ・ミピーディーファイ)とは

MIPI D-PHYとは、モバイル機器向けの高速インターフェース規格の一つ。D-PHYは、物理層の規格である。D-PHYはVer.2で1レーンあたり最大4.5Gbpsの通信速度を実現している。

【特長4】ハイパフォーマンス

AM62xシリーズは、最大4つの Arm®Cortex®-A53を搭載し、最大1.4GHzで動作し、3D GPUを搭載したバリエーションもあるため、高いパフォーマンスを実現します。

【特長5】安全機能

AM62xシリーズは、2023年10月現在、産業用、車両用共に機能安全準拠予定です。AM620-Q1では、AEC-Q100の認定を受けています。

AEC-Q100とは

AEC-Q100とは、電子部品の規格を決める団体であるAEC(Automotive Electronics Council)が実施する、車両用部品に特化した信頼性試験の規格。Q100は、車載用集積回路のストレステスト認定を指す。

AM62xシリーズの主なアプリケーション例

AM62xシリーズは、以下のアプリケーションに適しています。

  • 産業用HMI
  • 車載システム
  • タッチレスのビル・アクセス
  • 家電製品向けユーザー・インターフェイスとコネクティビティ
  • 医療用機器

AM62xシリーズの入手方法

AM62xシリーズは、TI社の正規販売店や下記のオンラインショップなどで購入できます。

AM62xシリーズの開発環境

AM62xシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • MCU+ SDK
  • Processor SDK Linux
  • Processor SDK RT-Linux
  • Code Composer Studio
  • Clock tree configuration

AM62xシリーズ評価ボード

2023年10月現在、AM62xシリーズの評価ボードは以下の通りです。

サポートCPU 特長 対象 データシート
SK-AM62 Arm® Cortex®-A53ベースの(AM623,AM625) HDMIディスプレイまたは外部LVDSパネルを使用するHMIなどで使用可能

最大2K解像度の幅広いディスプレイ・アプリケーションで利用できる

商用と産業用の両面で開発した人向け SK-AM62のデータシート

SK-AM62

SK-AM62は、TI社純正の評価ボードです。

解像度が高いHDMIやLVDSを経由するHDMIディスプレイまたは外部LVDSパネルを使用するHMIやコントロール・パネルと接続ができます。

最大2Kの解像度の各種ディスプレイ・アプリケーションで使用可能です。

幅広いアプリケーションに利用でき、産業と商用の両方で評価・開発をしたい人に適しています。

AM62xシリーズの対応OS

AM62xシリーズに対応している主なOSは、以下の通りです。

  • Android
  • Linux
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard+M(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

イー・フォースで提供しているμC3はITRON仕様のRTOSです。

高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3/Standard」

μC3/StandardはμITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOS。

マルチコアAMP拡張版RTOS「μC3/Standard+M」

μC3/Standard+MはμC3/StandardにAMP型のマルチコア拡張を追加したマルチコアプロセッサ向けのRTOS。

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3/Compact」

μC3/Compactはマイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOS。コンフィグレータが付属。

製品にご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。