組込み機器をIoT化するための勘所とは?既存製品のIoT化事例を紹介(3)

IoT化の事例紹介

事例3:駐車場車室管理システム

駐車場車室管理システムについて紹介します。

このシステムでは、天井に取り付けた距離センサーで車の在否を判定してLTEでデータをクラウドに送信し、アプリで車室の空き状況を表示しています。利用者はモニタアプリを確認することで、駐車場が空いているかが分かります。

距離センサーはBluetooth Meshを使用し、データをLTE経由でクラウドに送信します。

距離センサーイメージ

Bluetooth Meshとは

Bluetooth Meshは他のワイヤレスメッシュネットワーキング技術と異なり、低レベルの物理無線レイヤーから高レベルのアプリケーションレイヤーまで全てを定義できるフルスタックのソリューションです。プロダクト開発を容易にし、高い相互操作性を実現します。

出典:Bluetooth SIG「Mesh ネットワーキング」

システム構成

システム構成のイメージは下記です。

駐車場車室管理システムイメージ

超音波センサとBluetoothのモジュールを組み合わせたセンサ端末がBluetooth Meshで招き灯端末に情報を伝えます。LEDとBluetoothモジュールで構成されている招き灯端末は、車室が空いているか埋まっているかをライトの色で表示します。そして、センサ端末や招き灯端末からの情報を、Bluetooth Meshを使用してゲートウェイに送ります。
ゲートウェイではメイン制御部分とセンサ制御部分(Bluetoothモジュール)がUARTで繋がっています。クラウドとの通信にはLTEを使用しており、そのLTEモジュールともUARTで接続しています。

Bluetooth Meshの使用

Bluetooth Meshは多対多の接続を可能にする技術です。Bluetooth Meshにより、大規模なメッシュ型のネットワークを構築することができます。

今回の事例では、現場に100台規模のフロアが複数あり、300台規模の車室が存在する環境でした。そのようなデバイス数が多い大規模なネットワーク環境でも各デバイスの通信ができるよう、Bluetooth Meshを採用しています。

Bluetooth Mesh

続いて、Bluetooth Meshの特長をお伝えします。

ネットワークを構成する際は、デバイス毎にProvisioning(プロビジョニング)という設定操作が必要です。Provisioningをおこなうことで各デバイスにアドレスを割り当てていきます。実装や現場での設定は手間がかかる部分ですが、アドレス割り当ての設定は重要ですので、しっかりとおこないましょう。

Provisioning(プロビジョニング)とは

プロビジョニングとは、指定されたmeshネットワークにデバイスを追加するプロセスです。このプロセスでは、デバイスをネットワーク上のノードに変換し、セキュリティキーの配布と、追加されるデバイスの一意のIDの作成が含まれます。

引用:Bluetooth SIG Bluetoothについて学ぶ

 

アドレス割り当て

また、Bluetooth Meshを使用して大規模ネットワークを構成する際は、デバイスの数が増えると遅延が大きくなることにも留意しましょう。設計段階で秒オーダーの遅延を考慮した設計が必要です。

プロトコルスタック構成

続いて、今回のシステムのプロトコルスタック構成を紹介します。

プロトコルスタック構成

イー・フォース株式会社の既存製品であるiot-mosをベースとし、もともとWLANだったレイヤーをPPPに変更しました。これにより、PPPを通じてLTEの制御がおこなえ、LTE対応ができるようになっています。

iot-mosとは

イー・フォース株式会社のリアルタイムOSであるμC3(マイクロ・シー・キューブ)をベースとし、その上にネットワークスタックであるμNet3を載せたIoTプラットフォーム

データ通信料金の見積り

LTEなどの従量課金の場合には、データ通信量を基にランニングコストを見積ることが重要です。

アプリケーションのデータ量だけでなく、通信プロトコルのレイヤーごとのデータ量も計算してください。そして、トータルのデータ量を基に通信コストを想定しましょう。

データ通信量の見積り

異常系の動作検証

今回の事例ではLTEを使用していますが、LTEに限らず無線を使用する場合、どのように動作検証するかがポイントになります。

「無線は必ず切断されるもの」と認識し、その切断された異常時を想定した検証が必要です。そこで、意図しない切断を発生させるために下記を実施しました。

動作検証時のポイント

無線通信の確認:シールドボックスの使用や電波が届かない場所への移動。通信の切断と再接続をおこない動作検証。

上位プロトコル・MQTT通信の確認:MQTTのKeep Alive時間を短くして、セッションを切断。切断後に再接続し、期待する動作ができるかを検証。

「事例2:iot-mos(アイモス)」の記事でも、無線通信を使う際の動作安定について紹介しています。ぜひ参考にしてください。