組込み機器をIoT化するための勘所とは?既存製品のIoT化事例を紹介

IoT化を検討する際、「既存製品のIoT化」「クラウド対応」「スマホでの見える化や機器操作」といった要望が挙がります。

「組込み機器をIoT化するための勘所とは?既存製品のIoT化事例を紹介」の記事では全4回に分けて、既存製品をIoT化する際に検討するポイントを、3つの事例を取り上げながら紹介していきます。

既存製品をIoT化する際の検討ポイント

デバイス領域におけるポイント

デバイス領域(エッジデバイス・ゲートウェイ)におけるポイント

・既存製品とネットワークモジュールを接続するインターフェースはUARTで接続することが多い
スループットが足りない場合はSDIOを使用することもある。

・クラウドへの接続にはTLSが必須
証明書は基本的にFlashなどのストレージに書き込む。ファームウェアの中で一緒に持たせることもある。

・FOTA機能も必須
ファームウェアを自動アップデートできるように事前の設計が重要。

(1)給湯器リモコンの事例では、給湯器を制御する既存製品部分のマイコンに新しくネットワークモジュールを追加し、Wi-Fiを使ってクラウドと通信できるようにしました。

その際、既存製品とネットワークモジュールを接続するインターフェースにはUARTを利用しています。UARTでスループットが足りない場合は、SDIOなどその他のインターフェースを使用することも可能です。

(3)駐車場車室管理システムの事例でも、ゲートウェイのメイン制御部分とセンサ制御部分(Bluetoothモジュール)をUARTで繋げています。クラウドとの通信にはLTEを使用しており、そのLTEモジュールともUARTで接続しています。

また、給湯器リモコンの事例では無線モジュールのFOTA(Firmware Update Over-The-Air / ファームウェアのアップデート)に対応させました。クラウドに接続する為のCA証明書もOTAで書き換えられるようになっています。

アプリ開発におけるポイント

アプリ開発におけるポイント

・Web系言語(HTML/CSS/JavaScript)で開発すると開発期間コストを削減できる

・PWAを利用すると、Android(Chrome)とiOS(Safari)のどちらでも使えるスマホアプリを作りやすい

・Bluetoothも使いたい場合はCordovaを使用して開発する

給湯器リモコンの事例では、PWA(Progressive Web Apps)でスマホアプリを開発することで、工数を削減しながらごどちらのOSでも使用できるスマホアプリを実現しました。

2022年8月現在ではiOSでBluetoothのデバイスにアクセスできないため、Bluetoothを使いたい場合は、Apache Cordovaなどのモバイルアプリ開発フレームワークを利用してください。

クラウド利用におけるポイント

クラウド利用におけるポイント

・エッジデバイスから送信するデータはJSON形式を利用するとデバッグがしやすい
ただしデータ量が増える懸念があるため、オーバーヘッドと使いやすさのどちらを重視するかも踏まえて検討するとよい。

・プロトタイピングはGUIベースで環境構築ができる

・長期間データのダウンロードは非同期でおこなうことを検討する

・クラウドのシステム構成は柔軟に変更ができる
まずは最小構成で作成し、そこでコストを見積りながら最適な構成を考える。

(2)iot-mosの事例では、MQTTでAWS IoT Coreに接続しています。

パブリッククラウドに送信する場合、クラウドへのデータ送信形式をJSONにして送信すると扱いやすくなります。JSON形式ではデータサイズが大きくなったり、オーバーヘッドが発生するため、扱いやすさとデータサイズのどちらを重視するかは考慮する必要があります。

プロトタイピングをおこなう際はAWSを使用すると便利です。ほぼGUIの操作のみで環境の構築が可能で、すぐに試作開発をスタートできます。試作が順調にいけば、その部分を自動化するプログラムを作成して、スケールしていきましょう。

また今回の事例のように、クラウドへ保存したログデータのダウンロード時にブラウザがタイムアウトしてしまう事象が起こる場合は、クラウド側のバックエンドの非同期化が有効です。

IoTプラットフォーム製品の紹介

iot-mos(アイモス)

本記事の前半では、既存製品をIoT化する際のポイントを、デバイス領域(エッジデバイス・ゲートウェイ)、アプリ開発、クラウド利用の視点別にお伝えしました。

このように、さまざまな工夫をしながら開発を進める際は、カスタマイズしやすいIoTプラットフォームの利用が便利です。

記事「組込み機器をIoT化するための勘所とは?既存製品のIoT化事例を紹介(2)iot-mos(アイモス)」でも取り上げる、弊社製品iot-mos(アイモス)もおすすめです。

比較表

iot-mosは、株式会社ダイセン電子工業と弊社イー・フォース株式会社の組込みシステムにおけるセンサー制御やネットワークなどのノウハウや資産を活用し、短期間で簡単に「機器のIoT化」と「IoT製品の開発」をサポートするIoTプラットフォームです。

IoTを試作する際、2022年9月現在ではRaspberryPi(ラズベリーパイ)を使用するケースが多くなっています。しかし、元々は学習用に作られていることもあり、ハードウェアの観点などから量産には不向きです。

一方、スクラッチでゼロから開発する場合、高い費用と長い期間を要します。

iot-mosはスクラッチとRaspberryPiの中間に位置し、オリジナル開発よりも費用を抑えつつ、RaspberryPiよりも柔軟性を持つプラットフォームとして誕生しました。

プロトコルスタック構成はリアルタイムOSであるμC3(マイクロ・シー・キューブ)をベースとし、その上にネットワークスタックであるμNet3を載せた構成です。まずは最小構成で作成し、コスト面も検討しながら最適な構成に柔軟に変更することができます。

開発段階

開発前のPoC段階における動作検証から量産まで対応できる点も特長です。

「iot-mosとは?IoT開発の問題を解決する製品紹介」の記事でも、iot-mosについて紹介しています。ぜひご覧ください。

まとめ

本記事では、全4回の記事を通して、組込み機器をIoT化するための勘所として既存製品のIoT化事例を紹介していきます。

デバイス領域(エッジデバイス・ゲートウェイ)、アプリ開発、クラウド利用においては、いくつかの検討ポイントがあります。開発にあたり課題をどのように対処するか困った際は、紹介事例も参考にしていただけると幸いです。