
STM32ファミリは、STマイクロエレクトロニクス(以下ST社)のARM Cortex-Mを搭載した汎用マイクロコントローラです。
その中でもCortex-M4を搭載し、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)とFPU(浮動小数点ユニット)命令による高度な機能を備えた高性能マイコン「STM32F4」シリーズを紹介します。
STM32F4の製品ライン
製品ライン | 概要 |
---|---|
STM32F401 | メモリ・サイズ / 価格 / 動作時消費電力 / 性能においてバランスのとれたSTM32F4アクセス・ライン |
STM32F405/415 | STM32F4シリーズの基本ライン |
STM32F407/417 | STM32F405/415にEthernet MAC & カメラ・インタフェースを追加したSTM32F4基本ライン |
STM32F410 | STM32F4シリーズの中で最小の消費電流とパッケージを提供するSTM32F4アクセス・ライン |
STM32F411 | STM32F401をベースに動作時消費電力と性能のバランスを強化したSTM32F4アクセス・ライン |
STM32F412 | STM32F411に外部メモリ・インタフェース & Quad SPIを追加し内蔵メモリ・サイズを増やしたSTM32F4アクセス・ライン |
STM32F413/423 | STM32F412より内蔵メモリ・サイズを増やしDAC出力を追加したSTM32F4アクセス・ライン |
STM32F427/437 | Chrom‑ART Accelerator™(2Dグラフィック処理機能付DMA)を搭載したSTM32F4高性能ライン |
STM32F429/439 | STM32F427/437にTFT-LCDコントローラを追加したSTM32F4高性能ライン |
STM32F446 | 最大動作周波数180MHzによる高性能とメモリ・サイズ / 機能 / 価格のベストバランスを提供するライン |
STM32F469/479 | STM32F4シリーズで最大サイズのSRAMを備え全ての周辺機能を搭載した高集積製品ライン |
STM32F4の仕様
STM32F4とは
STM32ファミリの製品ラインアップ
STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。
- 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
- 最大1082 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」
- 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」
- 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」
- マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは
SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。
STM32F4シリーズは、高性能な「ハイパフォーマンスマイコン」に属します。
STM32F4とは
STM32F4シリーズは、ARM® Cortex®-M4をベースとし、ST独自の不揮発性メモリ・テクノロジおよびFlashアクセラレータであるARTアクセラレータTMにより、最大動作周波数180MHzでのFlashメモリからの命令実行で、Cortex-M4マイコン最高クラスのベンチマーク・スコア最大225DMIPS/608CoreMarkを実現します。また、マルチレイヤのバスマトリックスにより、処理性能だけでなく、データのスループットも大幅に向上します。
STM32F4シリーズは11個の互換製品ラインで構成され、マイコンのリアルタイム制御機能およびDSP、浮動小数点演算器(FPU)による信号処理性能を兼ね備えています。
ハイパフォーマンスマイコンは、高性能で充実した機能と豊富なコネクティビティを持つマイコンです。その中でも、STM32F4シリーズは、DSPやFPUなどの高い性能に特化したものです。
DSPの詳細については、下記の記事をご覧ください。
STM32F4シリーズの入手方法
STM32F4シリーズのマイコンは、ST社の販売代理店や下記のオンラインショップなどで購入できます。
- アクシスデバイス・テクノロジー株式会社
- クロニクス株式会社
- ネクスティ エレクトロニクス株式会社
- 株式会社レスターエレクトロニクス
- 伯東株式会社
- 株式会社マクニカ
- MOUSER ELECTRONICS
STM32F4の開発環境
STM32F4に対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。
- IAR Embedded Workbench for ARM
- Arm Keil MDK
- STM32CubeIDE
- SW4STM32
- Embedded Studio
STM32F4評価ボード
メーカー純正評価ボードのEVAL・DISCOVERY・Nucleo
STM32F4評価ボードには、下記の3種類があります。
- EVAL(エバル)ボード
- Discovery(ディスカバリー)ボード
- Nucleo(ニュークリオ)ボード
これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。
DISCOVERY・Nucleoの特徴
EVAL、DISCOVERY、Nucleoには、それぞれ次の特徴があります。
EVALの特徴
- LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
- STM32F4のほぼ全ての機能が評価可能
DISCOVERYの特徴
- EVALボードに比べて安価
- 実装されているデモサンプルが豊富
- STM32F4単体評価に最適
Nucleoの特徴
- DISCOVERYボードに比べて安価
- Arduino互換のPinヘッダーを搭載
- メーカーズなどのプロトタイプ向け
以上のように、デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL、STM32F4の単体評価をしたい場合はDiscovery、Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleoを選択します。
STM32F4に対応したEVALボード
STM32F4シリーズが評価できるEVALボードは6種類用意されています。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
STM3240G-EVAL | STM32F407IG | STM3240G-EVALのデータシート |
STM3241G-EVAL | STM32F417IG | – |
STM32429I-EVAL | STM32F429NI | STM32429I-EVALのデータシート |
STM32439I-EVAL | STM32F439NI | STM32439I-EVALのデータシート |
STM32446E-EVAL | STM32F446ZE | STM32446E-EVALのデータシート |
STM32469I-EVAL | STM32F469NI | STM32469I-EVALのデータシート |
STM32F4に対応したDISCOVERYボード
STM32F4シリーズが評価できるDISCOVERYボードは4種類用意されています。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
32F411EDISCOVERY | STM32F411VET6 | 32F411EDISCOVERYのデータシート |
32F429IDISCOVERY | STM32F429ZIT6 | 32F429IDISCOVERYのデータシート |
32F469IDISCOVERY | STM32F469NIH6 | 32F469IDISCOVERYのデータシート |
STM32F4DISCOVERY | STM32F407VGT6 | STM32F4DISCOVERYのデータシート |
STM32F4に対応したNucleoボード
STM32F4シリーズが評価できるNucleoボードは9種類用意されています。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
NUCLEO-F401RE | STM32F401RE | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F410RB | STM32F410RB | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F411RE | STM32F411RE | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F412ZG | STM32F412ZG | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F413ZH | STM32F413ZH | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F429ZI | STM32F429ZI | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F439ZI | STM32F439ZI | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F446RE | STM32F446RE | Nucleoのデータシート(共通) |
NUCLEO-F446ZE | STM32F446ZE | Nucleoのデータシート(共通) |
STM32F4の対応OS
STM32F4に対応しているOSは以下のとおりです。
- ThreadX
- embOS
- embOS-MPU
- embOS-safe
- μT-Kernel
- MicroEJ
- NORTi Oceans
- NORTi Professional II
- UCT μT-Kernel 2.0
- TOPPERS-Pro/ASP
- TOPPERS-Pro/HRP2
- FreeRTOS
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(同上)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。
μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。
高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。
μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。
ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。
STM32F4とμC3/Compactの導入事例
- 無線機メーカー製 海洋無線機器、海外業務用無線機
- 総合電機メーカー製 ホームエネルギーマネジメントシステム
- 総合電機メーカー製 X線高電圧発生装置
など
STM32F4とμC3/Standardの導入事例
- 計量・包装機器メーカー製 包装機
- 計量・包装機器メーカー製 ウェイトチェッカー
など