STM32MP1シリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

STM32MP1シリーズは、STマイクロエレクトロニクス(以下ST社)製のマイクロプロセッサです。STM32MP1シリーズは、Arm Cortex-A7とCortex-M4を搭載し、電力効率の高いリアルタイム制御と高度な機能を統合しています。

STM32MP1の製品ライン

製品ライン 概要
STM32MP151 シングル・コアのArm® Cortex®-A7を搭載したSTM32MP151ライン
STM32MP153 デュアル・コアのArm® Cortex®-A7を搭載したSTM32MP153ライン
STM32MP157 3D グラフィック処理ユニットを内蔵したSTM32MP157ライン

出典:STM32MP1シリーズ

STM32MP1の仕様

出典:STM32MP1シリーズ

STM32MP1とは

STM32ファミリの製品ラインアップ

STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。

  • 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
  • 最大3224 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」例:STM32F2、STM32H7、STM32F4、STM32F7など
  • 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」例:STM32F1、STM32F3など
  • 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」例:STM32L1、STM32L4、STM32L5など
  • マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは

SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。

半導体のSoC(システムオンチップ)、システムLSIとは?定義・意味・特徴をわかりやすく解説

STM32MP1シリーズは、幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」に属します。

STM32MP1とは

STM32MP1シリーズは、Arm® Cortex®-A7とCortex®-M4コアを組み合わせたヘテロジニアス・アーキテクチャをベースに、電力効率の高いリアルタイム制御と高度な機能を統合したSTM32ファミリの汎用32bitマイクロプロセッサ(MPU)です。

STM32マイクロプロセッサは、STM32ファミリ・エコシステムの実績のあるソフトウェア・ツールと技術サポートに加え、オープンソースLinuxディストリビューションであるOpenSTLinuxディストリビューションによって、容易かつ迅速なアプリケーション・ソフトウェア開発を可能とします。設計者は、評価ボードとDiscovery開発ボードに加え、機能拡張されたSTM32Cubeエコシステムによる開発環境を利用できます。また、Cortex-M4では、STM32マイクロコントローラ(マイコン)の開発エコシステムを活用できます。

出典:STM32MP1シリーズ

STM32MP1は、Arm Cortex-A7とCortex-M4を搭載したマルチコアプロセッサです。

マルチコアとは

「マルチコア(メニーコア)」とは、1つのプロセッサの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。マルチコアのプロセッサは、複数の処理を並列しておこなうことで、シングルコアに比べ、高い処理能力を実現できる。

マルチコアについては、以下をご覧ください。

組み込みにおけるマルチコア、マルチコアプロセッサとは?種類・定義・特徴をわかりやすく解説

Arm Cortex-A7は最大800MHz、Cortex-M4は最大204MHzで動作します。

Cortex-A7とCortex-M4は、それぞれ独立して動作します。このため、必要に応じてCortex-A7を停止してCortex-M4だけを動作させることで、アプリケーションの要件に応じて最適な電力効率を再現します。

上記のように、STM32MP1シリーズは、電力効率の良いリアルタイム制御と高性能を併せ持ったマイクロプロセッサです。

STM32MP151

STM32MP151は、シングルコアのCortex-A7とCortex-M4を搭載しています。

またSTM32MP151は、10 / 100Mまたはギガビット・イーサネットや、8~14bitカメラ・インタフェースなど、最大35の通信周辺機器を搭載しています。

STM32MP153

STM32MP153は、デュアルコアのCortex-A7とCortex-M4を搭載しています。

またSTM32MP153は、CAN FDインターフェースを搭載しています。このCAN FDインターフェースは、タイムトリガードCAN(TTCAN)に対応しています。

タイムトリガードCAN(TTCAN)とは

TTCANとは、CANメッセージのタイムトリガプロトコルのこと。

STM32MP157

STM32MP157は、デュアルコアのCortex-A7とCortex-M4を搭載しています。

STM32MP157は、3D グラフィック処理ユニット(GPU)を搭載しています。これにより、GUI、アニメーションなどのアプリケーションにおいて、3Dグラフィックスを高速化できます。

ポイント
  • STM32MP151:最大35の通信周辺機器
  • STM32MP153:タイムトリガードCAN(TTCAN)に対応したCAN FDインターフェースを搭載
  • STM32MP157:3D グラフィック処理ユニット(GPU)を搭載

STM32MP1シリーズの入手方法

STM32MP1シリーズのマイコンは、ST社の販売代理店/取扱店や下記のオンラインショップなどで購入できます。

STM32MP1の開発環境

STM32MP1に対応した代表的な開発環境は、以下のとおりです。

  • IAR Embedded Workbench for ARM
  • STM32CubeIDE
  • ARM Development Studio

STM32MP1評価ボード

STM32MP1評価ボードには、下記の2種類があります。

  • EVAL(エバル)ボード
  • Discovery(ディスカバリー)ボード

これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。

EVALボード・Discoveryボードの特徴

EVAL、DISCOVERYには、それぞれ次の特徴があります。

EVALの特徴
  • LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
  • STM32MP1のほぼ全ての機能が評価可能
DISCOVERYの特徴
  • EVALボードに比べて安価
  • 実装されているデモサンプルが豊富
  • STM32MP1単体評価に最適

以上の特徴から、それぞれの評価ボードの用途は、次のとおりです。

ポイント
  • デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL
  • STM32L4+の単体評価をしたい場合はDiscovery

STM32MP1に対応したEVALボード

STM32MP1が評価できるEVALボードは、以下の4種類です。

ボード 搭載マイコン データシート
STM32MP157A-EV1 STM32MP157 STM32MP157A-EV1のデータシート
STM32MP157C-EV1 STM32MP157 STM32MP157C-EV1のデータシート
STM32MP157D-EV1 STM32MP157 STM32MP157D-EV1のデータシート
STM32MP157F-EV1 STM32MP157 STM32MP157F-EV1のデータシート

STM32MP1に対応したDiscoveryボード

STM32MP1が評価できるDiscoveryボードは、以下の4種類です。

ボード 搭載マイコン データシート
STM32MP157A-DK1 STM32MP157
STM32MP157C-DK2 STM32MP157 STM32MP157C-DK2のデータシート
STM32MP157D-DK1 STM32MP157 STM32MP157D-DK1のデータシート
STM32MP157F-DK2 STM32MP157 STM32MP157F-DK2のデータシート

STM32MP1の対応OS

STM32MP1に対応しているOSは以下の通りです。

  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard+M(同上)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux(同上)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

小さいフットプリント
マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
μC3/Configurator付属
選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
豊富なCPUサポート
業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
省電力対応
デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

資料ダウンロード(無料)

高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。

μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。

ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。

32/64bitの高性能プロセッサに最適化
割り込み応答性を高め、32/64bitの高性能プロセッサ向けに最適化されたμITRON4.0仕様のカーネル。
豊富なプロセッサ・サポート
業界随一のプロセッササポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
マルチコア対応
組込み機器向けに最適なAMP型カーネル。マルチコアによって、リアルタイム性能を強化します。
豊富なデバイスドライバを用意
I2C, SPI, GPIO, SDなどのデバイスドライバをオプションで用意。(UART, Timer, INTCはμC3に、EthernetドライバはμNet3に付属しています。)

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

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LinuxとRTOSの共存ソリューション「μC3(マイクロ・シー・キューブ)+Linux」

μC3+LinuxはマルチコアCPUにLinuxとRTOSを共存させ、OS間の通信を可能にするソリューションです。

種類の異なった2つのOSを共存させることで、RTOSのリアルタイム性能とLinuxが持つ豊富なソフトウェア資産を有効に活用することができます。

異なったタイプのマルチコアCPUに対応
ホモジニアス(同一プロセッサ・コアによる構成)ヘテロジニアス(異なるプロセッサ・コアによる構成)の両方に対応しています。
メーカー提供のLinuxディストリビューションに対応
CPUベンダーが標準でサポートするLinuxに対応し、アプリケーションの開発が迅速にできます。
OS間通信をサポート
メッセージ形式のAPI(RPMsg)を使って、OS間の通信を容易に実現できます。
OpenAMP仕様を採用
Multicore Associationによって標準化されたOpenAMPの仕様に対応しています。
RTOSによる高速ブート
μC3を先に起動することで高速起動ができます。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

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μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ

STM32MP1とμC3+Linuxの導入事例

  • 電子機器・工作機械・精密部品メーカー製 プリンター