- マイコンとプロセッサの違いは何でしょうか?
- マイコンとプロセッサは、どちらもCPU(中央演算装置)を搭載しています。マイコンとプロセッサは、どちらもCPUを核として、複数の機能・装置をまとめてチップ化したものです。
両者の違いは、性能・機能、消費電力、価格(コスト)にあります。
マイコン(MCU)・プロセッサ(MPU)とは
マイコンとプロセッサは、どちらもCPUを核として、複数の機能・装置をまとめてチップ化したものです。
マイコン(Micro Controller Unit・MCU)
マイコンとは、マイクロコントローラの略。CPUを搭載し、メモリなどを一つのチップにまとめたもの。
プロセッサ(Micro Processor Unit・MPU)
プロセッサは、CPUそのものや、CPUの機能をチップに集積したもの(=MPU)のこと。プロセッサの中には、グラフィックスプロセッサ(GPU)など、特定の処理に特化したものもある。
このように、マイコン、プロセッサは、どちらもデータの演算・制御を行い、大分類ではCPUと言えます。
また、両者には違いがあるものの、その厳密な定義は、必ずしも明らかではありません。
ポイント
- マイコン・プロセッサは、どちらもCPUを搭載し、チップ化したもの
- マイコン・プロセッサは、どちらも大分類ではCPUと言える
マイコンとプロセッサの違い
マイコンとプロセッサの違い・比較一覧表
マイコン、プロセッサはの違いは、以下の通りです。あくまでも傾向であり、これらの違いには、例外や反例があります。
マイコン | プロセッサ | |
---|---|---|
性能・機能 | 演算ビット数:8~32ビット
動作周波数:数メガから数百メガヘルツ 内蔵機能:メモリ・外部入出力を内蔵 |
演算ビット数:32ビット、64ビット
動作周波数:数百メガから数ギガヘルツが主流 内蔵機能:メモリや外部入出力が外付けで必要 |
消費電力 | 低い | 高い |
価格(コスト) | 低い | 高い |
用途 | 限定的 | 汎用的 |
具体例 | Cortex-M | Cortex-A、Cortex-R |
マイコンとプロセッサの性能の違い
マイコンとプロセッサの違いとして、性能が挙げられます。
マイコンとプロセッサの演算ビット数の違い
マイコンとプロセッサには、演算ビット数の違いがあります。
演算ビット数とは
CPUの演算ビット数とは、一度に処理できるデータ(バス)の幅のこと。ビット数の値が大きいほど演算能力が高くなる。
マイコンの演算ビット数は、8ビット~32ビットが主流です。
これに対し、現在ではプロセッサの演算ビット数は、32ビットが最低ラインで、最近は64ビットに移行しつつあります。
32ビットの場合の1回の演算は0~42億9496万7295です。これに対し64ビットだと0~1844京6744兆0737億0955万1615になります。
このため、マイコンよりもプロセッサの方が、演算能力が高いと言えます。
マイコンとプロセッサの動作周波数の違い
マイコンとプロセッサには、動作周波数の違いがあります。
CPUの動作周波数は、1秒間のクロック数を指します。このため、動作周波数の値が高いほど、高速に動作します。
動作周波数とは
動作周波数とは、CPUの性能を示す指標の一つで、CPUが処理を同期させるために用いる信号(=クロック)の周波数。動作周波数は、1秒当たりのクロック数を指す。動作周波数はクロック周波数とも言う。
マイコンの動作周波数は、16MHzくらいからになります。一方プロセッサの動作周波数は400Mhz以上が多く、中には3GHzを超えるデバイスもあります。
上記のように、マイコンよりもプロセッサの方が高速に動作します。
ただし、例外として、マイコンの中には、スマートフォン用のハイエンドなものなど、動作周波数が2GHzを超えるものもあります。
動作周波数に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。
マイコンとプロセッサの内蔵機能の違い
マイコンとプロセッサには、内蔵機能の違いがあります。
マイコンには、メモリや外部入出力が内蔵されています。
一方プロセッサは、メモリや外部入出力が内蔵されていないものが多いです。このため、メモリや外部入出力を外付けで繋げる必要があります。
マイコンとプロセッサの消費電力の違い
マイコンとプロセッサの違いとして、消費電力が挙げられます。
マイコンの消費電力は、通常1W未満程度です。高いものでも、数W程度です。
一方、プロセッサの消費電力は、数W~数十Wで、高いものでは100Wを超えるデバイスもあります。
上記のように、マイコンとプロセッサを消費電力で比較すると、マイコンの方が低く、プロセッサの方が高いと言えます。
マイコンとプロセッサの価格(コスト)の違い
マイコンとプロセッサの違いとして、価格(コスト)が挙げられます。
既に述べた通り、マイコンよりもプロセッサの方が、高速処理を目的としているため、コストのかかる製造手法が取り入れられています。このため、プロセッサの方が製造単価が高くなるため、デバイスの価格も高くなります。
また、プロセッサの方が消費電力が高いため、ランニングコストもプロセッサの方が高くなります。
デバイスの価格としては、マイコンは、大半のものは数十セント~数ドルです。高いものでも、数十ドル程度です。
一方プロセッサは、10ドル~数千ドルです。
もちろん、例外として高性能なマイコンよりも低価格なプロセッサも存在します。
マイコンとプロセッサの用途の違い
マイコンとプロセッサの違いとして、用途が挙げられます。
マイコンは、プロセッサと比較すると、特定の用途に向けて、機能・性能が絞り込まれています。
一方、プロセッサは、マイコンよりも汎用的な機能を持っており、比較的高性能です。
このため、実現したい機能・性能を考慮の上、マイコンで十分であればマイコンを選択し、性能の高さや汎用性が必要であればプロセッサを選択します。
マイコンとプロセッサの具体例
マイコンとプロセッサの具体例として、ARMのCortexシリーズが挙げられます。
ARMのCortexシリーズは、CPUコアであり、何らかの制御=コントロールをするために組込み機器に搭載されています。その意味では、CPUコアであると同時に、プロセッサ・マイコンであるとも言えます。
Cortexシリーズは、以下の3つに大別されます。
- Cortex-A:アプリケーション(Application)向け
- Cortex-R:リアルタイム制御(Real Time)向け
- Cortex-M:マイコン(Microcontroller)向け
アプリケーション向けのCortex-Aはプロセッサ向け、Cortex-Mはまさにマイコン向けと言えます。Cortex-Rは中間にありますが、どちらかというとプロセッサ向けに分類されます。
余談ですが、このA、R、Mは、会社名であるARMから割り当てられたとされています。
マイコン・プロセッサの特徴を纏めると、以下になります。これらの違いを考慮しながら、機能・性能・コストのバランスで最適なCPUを選択することが重要になります。
ポイント
- マイコンはプロセッサよりも性能が低いが、低コスト・低消費電力
- プロセッサはマイコンよりも性能が高いが、高コスト・高消費電力
- 機能・性能・コストのバランスで最適なCPUを選択することが重要
マイコンとプロセッサの違いのまとめ
以上の点から、繰り返しになりますが、マイコンとプロセッサの違いをまとめると、以下のとおりです。
マイコン | プロセッサ | |
---|---|---|
性能・機能 | 演算ビット数:8~32ビット
動作周波数:数メガから数百メガヘルツ 内蔵機能:メモリ・外部入出力を内蔵 |
演算ビット数:32ビット、64ビット
動作周波数:数百メガから数ギガヘルツが主流 内蔵機能:メモリや外部入出力が外付けで必要 |
消費電力 | 低い | 高い |
価格(コスト) | 低い | 高い |
用途 | 限定的 | 汎用的 |
具体例 | Cortex-M | Cortex-A、Cortex-R |