【ルネサス】SH-4A CPU(SuperH RISC engine ファミリ)とは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

SH-4A CPUとは、ルネサスエレクトロニクス(以下、「ルネサス」)のハイエンドマイコンです。SH-4A CPUは、キャッシュメモリやMMUを搭載し、高速データ処理が可能なSH-4Aコアを搭載しています。

SH-4A CPUシリーズの製品ライン

  • SH7451シリーズ
  • SH7456シリーズ
  • SH7457シリーズ
  • SH7459シリーズ
  • SH7723シリーズ
  • SH7730シリーズ
  • SH7734シリーズ
  • SH7780シリーズ
  • SH7785シリーズ

SH-4A CPUシリーズの仕様

Bit Size Program Memory(KB) RAM(KB) Lead count(#) Supply Voltage(V)
SH7451 32 1536 536 292 3 – 5.5
SH7456 32 1024 280 176 3 – 5.5
SH7457 32 1024 280 176 3 – 5.5
SH7459 32 1536 536 176 3 – 5.5
SH7723 32 0 16 449 3 – 3.6
SH7730 32 0 16 208 3 – 3.6
SH7734 32 0 32 440 3 – 3.6
SH7780 32 0 16 449 3 – 3.6
SH7785 32 0 152 436 3 – 3.6

出典:SuperH RISC engine ファミリマイコン

SuperH RISC engine ファミリとは

SuperH RISC engine ファミリは、ルネサス社製のハイエンドマイコンです。

SuperH RISC engine ファミリが搭載しているコアは、以下の通りです。

  • SH-2A:多彩な周辺機能を内蔵
  • SH-4A:高速データ処理が可能

こちらの記事では、SH-4Aを搭載したシリーズを紹介します。

SH-4A CPUシリーズの特長

SH-4A CPUシリーズの特長は、以下の通りです。

  • 周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現
  • 高い動作周波数
  • マルチコアに対応

【特長1】周波数あたりの性能を高め、低消費電力を実現し、コストを低減

SH-4Aは、CPUのアーキテクチャとして以下の2つを採用しています。

  • スーパースカラ
  • ハーバードアーキテクチャ
スーパースカラ

SH-4Aは、スーパースカラを採用しています。

スーパースカラとは

スーパースカラとは、CPUを高速化するアーキテクチャの一つ。一度に複数の命令を読み込み、同時に実行できる。パイプライン処理を複数並列させて実現している。

パイプライン処理とは

パイプライン処理とは、コンピュータの高速化を図る技術のひとつ。パイプライン処理では、1つの命令を独立したステージに分割し、各ステージを並列的に実行する。これにより複数の命令がオーバーラップされ、処理が高速化される。

このためSH-4Aは、1クロックで最大2命令の並列実行を可能にします。

ハーバードアーキテクチャ

またSH-4Aは、ハーバードアーキテクチャを採用しています。

ハーバードアーキテクチャとは

ハーバードアーキテクチャとは、バスアーキテクチャの一つ。命令用とデータ用のバスを分ける構造を取っている。これにより、CPUが命令をフェッチしている間でも、データバスを用いてデータにアクセスが可能になる。

従来のSuperHシリーズでは、命令用とデータ用のバスを兼用していました。SH‐4Aではハーバードアーキテクチャの採用により、命令取込みとデータアクセスの競合が発生しません。これにより、メモリアクセスが連続する演算においても、大幅な性能低下は起こりません。

【特長2】高い動作周波数

SH-4Aの動作周波数は、最大600MHzです。

動作周波数とは

動作周波数とは、CPUの性能を示す指標の一つ。別名、「クロック周波数」とも言う。クロックとは、CPUが処理を同期させるために用いる信号のこと。動作周波数・クロック周波数は、文字通り、クロックの周波数のことで、1秒当たりのクロック数(単位:Hz・ヘルツ)で表示する。

SH-4Aは、旧シリーズでは5段構成だったパイプライン構成を7段としています。

これにより、高い動作周波数を実現しました。

動作周波数については、以下のページをご覧ください。

マイコン・CPUの動作周波数(クロック周波数)とは?初心者向けに意味・定義をわかりやすく解説

【特長3】マルチコアに対応

SH-4Aは、マルチコアに対応しています。

マルチコアとは

「マルチコア(メニーコア)」とは、1つのプロセッサの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。マルチコアのプロセッサは、複数の処理を並列しておこなうことで、シングルコアに比べ、高い処理能力を実現している。マルチコアによって高機能化されたプロセッサは、「マルチコアプロセッサ」と呼ばれる。

SH-4Aのシリーズ最上位のSH7786は、コアを2つ搭載しています。このコアは、SMP(対象型マルチプロセッシング)とAMP(非対称型マルチプロセッシング)のどちらにも対応しています。

SMP(読み方:エスエムピー)

SMPは、対象型のマルチコアシステム。「対象型マルチプロセッシング」を意味するSymmetric Multi-Processorの略。コアごとの役割が平等であり、統一になっている。

AMP(読み方:エーエムピー)

AMPは、非対称型のマルチコアシステム。「非対称型マルチプロセッシング」を意味するAsymmetric Multi-Processorの略。コアごとの役割は異なり、それぞれのコアで固有のプログラムが動作する。

SMPを採用した場合では、CPUコアは1つのOSの元で動きます。このため、CPUの数を意識することなく、ソフトウェアを構築できます。

一方AMPを採用した場合では、各OSが得意な処理を独立したCPUで実行できます。

マルチコアの詳細は、以下のページをご覧ください。

組込みにおけるマルチコア、マルチコアプロセッサとは?種類・定義・特徴をわかりやすく解説

SH-4A CPUシリーズの入手方法

SH-4A CPUシリーズは、以下のルネサスの特約店・取扱店や、オンラインショップなどで購入できます。

SH-4A CPUシリーズの開発環境

SH-4A CPUシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • High-performance Embedded Workshop
  • IAR Embedded Workbench
  • 統合開発環境MULTI

SH-4A CPUシリーズの評価ボード

SH-4A CPUシリーズの評価ボードは、以下の通りです。

搭載MPU 特徴 対象 データシート
AP-SH4A-0A SH7780 PCIホスト評価ボードと接続可能 PCIバスを評価したい方 AP-SH4A-0Aのデータシート
AP-SH4A-1A SH7730 RS-232アダプタと接続可能 RS-232通信を評価したい方 AP-SH4A-1Aのデータシート
AP-SH4A-2A SH7763 USBホスト/ファンクションや、Ethernetなどの周辺機能を搭載 USBやEthernetなどの周辺機能を中心に評価したい方 AP-SH4A-2Aのデータシート
AP-SH4A-3A SH7785 Ethernetポートを搭載し、Ethernetのサンプルプログラムも付属 Ethernetを中心に評価したい方 AP-SH4A-3Aのデータシート
AP-SH4A-4A SH7734 LCDキットや無線LANモジュールに対応 LCDを使って評価したい方

無線LAN機能を中心に評価したい方

AP-SH4A-4Aのデータシート

AP-SH4A-0A

AP-SH4A-0Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。

AP-SH4A-0Aは、別売りのPCIホスト評価ボード「AP-SH4A-0AEVB」が用意されています。この2つの評価ボードを搭載すると、簡単にPCIバスの評価が可能になります。

このためAP-SH4A-0Aは、「PCIバスを評価したい」という方に最適な評価ボードです。

AP-SH4A-0Aの価格・購入方法

AP-SH4A-0AEVBの価格・購入方法

AP-SH4A-1A

AP-SH4A-1Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。

AP-SH4A-1Aは、RS-232アダプタを接続できます。これにより、RS-232通信を簡単に実現できます。

このためAP-SH4A-1Aは、「RS-232通信を評価したい」という方に最適な評価ボードです。

AP-SH4A-1Aの価格・購入方法

AP-SH4A-2A

AP-SH4A-2Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。

AP-SH4A-2Aは、USBホスト/ファンクションや、Ethernetなどの周辺機能を搭載しています。

このため、AP-SH4A-2Aは、「USBやEthernetなどの周辺機能を中心に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

AP-SH4A-2Aの価格・購入方法

AP-SH4A-3A

AP-SH4A-3Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。

AP-SH4A-3Aは、DDR2-SDRAM、PCIコントローラ、ディスプレイユニット等のインタフェースを搭載しています。

また、Ethernetポートも搭載しており、Ethernetのサンプルプログラムも付属しています。

このため、AP-SH4A-3Aは、「Ethernetを中心に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

AP-SH4A-3Aの価格・購入方法

AP-SH4A-4A

AP-SH4A-4Aは、アルファプロジェクト社製の評価ボードです。

AP-SH4A-4Aは、他の評価ボード同様、USBインターフェースやEthernetなどに対応しています。

また、アルファプロジェクト社製のLCDキットの「LCD-KIT-B02」「LCD-KIT-C01」「LCD-KIT-D02」や、無線LANモジュール「WM-RP-10」にも対応しています。

このため、AP-SH4A-4Aは、「LCDを使って評価したい」「無線LAN機能を中心に評価したい」という方に最適な評価ボードです。

AP-SH4A-4Aの価格・購入方法

SH-4A CPUシリーズの対応OS

SH-4A CPUシリーズに対応している主なOSは、以下の通りです。

  • HI7750/4
  • HI7300/PX
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。

μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。

ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。