ショールーム

近年、SDGsやESGへの関心が高まるにつれて、IT技術を活用してオフィスの環境を向上させるスマートオフィスにも注目が集まっています。

建物の省エネ性、安全性、快適性などを実現する際、照明も重要な要素となります。

本記事では、調光や調色を制御するオープンプロトコルである国際規格DALIについて紹介します。

DALIとは?

DALIは、Digital Adressable Lighting Interfaceの略称で、「デジタルでアドレス指定が可能な照明インターフェイス」を意味します。IEC62386に準拠した、照明の調光を制御するための通信規格です。

ヨーロッパをはじめ、世界で幅広く使用されており、規格を満たす製品であれば簡単に接続できます。

DALIの特長

オフィス照明

DALIには下記のメリットがあります。

特長1:照明器具ごとに個別制御が可能

DALI対応照明器具の1台ずつにアドレスを設定することができるため、同一回路内の器具であっても個別に調光や調色をコントロールできます。

また複数の照明器具を個別にコントロールできることで、さまざまなパターンの照明を演出することも可能です。

他にも、個別制御ができるため照明器具の追加や配置変更がしやすいメリットもあります。

特長2:双方向通信

双方向通信ができるため、通信環境があれば器具の状態を遠隔で確認することができます。

従来のように人が時間をかけて現地に行って見回りや点検をせずに済むため、建物の管理効率が向上します。

また、ネットワーク接続に対応したDALIのマスタ装置を使うことで、同一の建物内だけでなく複数の建物の照明をを1カ所で管理・制御することも可能です。

特長3:オープンプロトコル

DALI規格に準拠した器具であれば、異なるメーカの製品でもひとつの制御システムでコントロールできます。制御用デバイス1台で、照明器具、センサ、スイッチなどの機器合計64台分までのDALIアドレスを設定できます。

またDALIシステムをビルのエネルギー管理システム(BEMS)と連動させることで、照明と同時に空調やブラインドなどを制御することも可能です。

参考:ルネサス エレクトロニクス株式会社「DALIソリューション」
参考:小泉産業株式会社「日本最大の次世代照明制御DALIシステムラボ「OBAL STUDIO」開設」

留意点

DALIのメリット紹介しましたが、導入検討にあたっては留意点も知っておきましょう。

有線版では通信用の有線接続が必要

DALIの無線版やPLC(Power Line Communication)版の製品化も進んでいますが、有線版の場合は、電源とは別に2線の通信線を接続する必要があります。

同じ場所に配線する場合でも、無線版やPLC版のケースと比べて施工の手間が2倍になります。

参考:アイティメディア株式会社 ITmedia「ルネサス、DALI照明制御で無線版とPLC版を開発」

自動制御にはマスターとなる制御装置が必要

ネットワーク経由での制御や、センサの出力に応じた制御を行う場合、マスターとなる装置と連携させる必要があります。

マスター装置は複数のメーカーから発売されており、連携できるシステムのバリエーションは製品によって異なります。

導入事例

DALI照明の活用シーンを紹介します。

オフィス

人感センサーが人がいないエリアを検知すると消灯する、照度センサーが窓からの光を検知すると窓側の照明を消灯するなど、オフィスの状態に応じて不要な消費電力を削減します。

また、太陽光を模した照明を人間の体内リズムに準じて変化させることで、リラックスすしやすい空間を生みだしている企業もあります。

働きやすさ、アイデアの出しやすさ、社員同士のコミュニケーションの取りやすさなどに好影響を与えます。

参考:丸紅アークログ株式会社「コイズミ照明がいち早く導入。照明制御システム「DALI」が可能にした、あかり+αの価値」

ホテル

設定時刻や外光に合わせた自動制御ができるため、夕方以降は高級感のある間接照明に切り替える、日の入りを検知した際に落ち着きのある照明に切り替える、などの対応が可能です。

朝・昼・夕方・夜それぞれで照明の明るさを調整して理想のシーンを演出することで、同じ場所であってもお客様に違う雰囲気を楽しんでいただけます。

参考:神田通信機株式会社「納入事例」

今後の展望とまとめ

DALIはヨーロッパを中心に世界での普及が進んでいます。一方、日本では複数メーカーの製品を利用する際に性能保証がしづらいなどの理由で導入が遅れていました。

しかし、相互運用性のあるDALI+(ワイヤレスDALI)の登場により、異なるメーカーの製品を使用する際の懸念は抑えられ、ワイヤレスのため導入も容易になっています。

SDGsやESGに関する対応が企業に求められる昨今、DALI照明の活用は持続可能な社会に貢献する方法の一つとして最適です。

国内の企業も、既に導入して業務効率や生産性を向上させた企業の好事例などを参考にしながら積極的に活用を試みることで、照明による新たな価値提供が増えていくと期待できます。