【ルネサス】RZ/Nとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

RZ/Nとは、ルネサスエレクトロニクス(以下、「ルネサス」)のマイクロプロセッサです。RZ/Nは、Cortex-A7とCortex-M3を搭載しており、産業用マルチプロトコルの実装が簡単に可能なデバイスです。

RZ/Nシリーズの製品ライン

  • RZ/N1D
  • RZ/N1S
  • RZ/N1L

RZ/Nシリーズの仕様

項目 RZ/N1D RZ/N1S RZ/N1L
型名 R9A06G032NGBG R9A06G032PGBG R9A06G032VGBG R9A06G032EGBG R9A06G032VGBA R9A06G032EGBA R9A06G033NGBG R9A06G033PGBG R9A06G033VGBA R9A06G033EGBA R9A06G034VGBA
供給電圧 3.3 V for I/O, 1.15V for CPU 3.3 V for I/O, 1.15 V for CPU 3.3 V for I/O, 1.15V for CPU
1.5 V/1.8 V for DDR3 or DDR2
CPUコア Dual Arm® Cortex®-A7 + Arm® Cortex®-M3 (R-IN エンジン) Arm® Cortex®-A7 + Arm® Cortex®-M3 (R-IN エンジン) Arm® Cortex®-M3 (R-IN エンジン)
最大動作周波数 500 MHz (Cortex®-A7) / 125 MHz (Cortex®-M3) 500 MHz (Cortex®-A7) / 125 MHz (Cortex®-M3) 125 MHz
SRAM(ECC付) 2 MB 6 MB 6 MB
外部メモリ DDR2/DDR3 コントローラ あり なし なし
NAND フラッシュ コントローラ あり あり あり
Quad-I/O SPI 1 チャネル 2 チャネル 1 チャネル 1 チャネル
SDIO-eMMC 2 チャネル 2 チャネル 2 チャネル
表示機能 LCD コントローラ LCD コントローラ なし
ネットワーク機能 R-INエンジン あり あり あり
イーサネットポート 5 ポート(4+1) 3 ポート(2+1) 5 ポート(4+1) 3 ポート(2+1) 3 ポート(2+1)
GMAC、EtherCAT®、Sercos® Ⅲから選択可能 GMAC、EtherCAT®、Sercos® Ⅲから選択可能 GMAC、EtherCAT®、Sercos® Ⅲから選択可能
Independent GMAC 最大 2 ポート N/A 最大 2 ポート 最大 1 ポート 最大 1 ポート
(スイッチ経由で1port使用可能)
EtherCAT スレーブコントローラ 最大 3 ポート 最大 2 ポート 最大 3 ポート 最大 2 ポート 最大 2 ポート
SercosIII スレーブコントローラ 最大 2 ポート 最大 2 ポート 最大 2 ポート
HSR スイッチ(オプション) あり(オプション) なし なし
タイマ機能 汎用タイマ (16 ビット x 6 チャネル + 32 ビット × 2 チャネル) × 2 (16 ビット x 6 チャネル + 32 ビット × 2 チャネル) × 2 (16 ビット x 6 チャネル + 32 ビット × 2 チャネル) × 2
リアルタイムクロック(RTC) あり あり なし
ウォッチドッグ Arm® Cortex®-A7 コア用 + Arm® Cortex®-M3 コア用 Arm® Cortex®-A7 コア用 + Arm® Cortex®-M3 コア用 あり
アナログ機能(12-ビット 分解能 A/D コンバータ) 8 チャネル x 2 ユニット 8 チャネル x 1 ユニット 8 チャネル x 1 ユニット 8 チャネル x 1 ユニット
通信インタフェース UART 8 チャネル 8 チャネル 8 チャネル
I2C 2 チャネル 2 チャネル 2 チャネル
MSEBI マスタ / スレーブ マスタ / スレーブ スレーブ
(Parallel Bus Interface)
USB 2.0 2 チャネル ( ホスト + ホスト/ファンクション) 2 チャネル ( ホスト + ホスト/ファンクション) 2 チャネル ( ホスト + ホスト/ファンクション)
Mailbox あり あり なし
SPI マスタ 4 チャネル + スレーブ 2 チャネル マスタ 4 チャネル + スレーブ 2 チャネル マスタ 4 チャネル + スレーブ 2 チャネル
CAN 2 チャネル 2 チャネル 2 チャネル
I/O ポート 最大 170本 最大 132本 最大 160本 最大 95本 最大 95本
パッケージ 400ピン LFBGA 324ピン LFBGA 324ピン LFBGA 196ピン LFBGA 196ピン LFBGA
(17 x 17 mm, 0.8mmピッチ) (15 x 15 mm, 0.8 mmピッチ) (15 x 15 mm, 0.8 mmピッチ) (12 x 12 mm, 0.8 mmピッチ) (12 x 12 mm, 0.8 mmピッチ)
動作温度範囲 Tj = -40℃ ~ +110℃ Tj = -40℃ ~ +110℃ Tj = -40℃ ~ +110℃
セキュリティ機能(オプション): 非対応 対応 非対応 対応 非対応 対応 非対応 対応 非対応 対応 非対応
セキュアブート、JTAGロック、チップID

出典:RZ/N1

RZ/Nシリーズとは

RZファミリの製品ラインアップ

RZファミリは、ルネサス社製の32ビットおよび64ビットマイクロプロセッサー(MPU)です。Cortex-A7、A9、A15、A53、A57、およびR4を搭載しています。

RZファミリは、ネットワーク機能を強化しているほか、高速リアルタイム制御を実現しています。また、カメラ入力や音声入力などのHMIも豊富です。

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)とは

人間と機械が情報をやりとりするための手段や道具の総称。コンピュータにおけるHMIは「ユーザーインターフェース(UI)」と呼ばれることが多い。

RZファミリのラインアップは、下記の通りです。

  • RZ/A:機器制御・デジタルオーディオ信号処理等の高速化に特化
  • RZ/G:高速I/Fを備えた多機能プロセッサ
  • RZ/V:低消費電力で高速なAI処理が可能
  • RZ/T:密結合メモリによる高速・高応答性を実現
  • RZ/N:産業用イーサネットプロトコルをサポート

RZ/G1を含むRZ/Gは、高速I/Fを備えた多機能プロセッサシリーズです。

RZ/Nシリーズとは

RZ/N1シリーズは、単一デバイス上で複数の産業用ネットワークプロトコルと冗長ネットワーク技術に対応する、高い拡張性と性能を誇る Arm® を搭載した通信デバイスです。 RZ/N1 にはデュアル/シングル Arm® Cortex®-A7、最大 6MB の SRAM、そして高度なネットワーキング機能、オンチップセキュリティを備えた 5 ポートギガビットスイッチが搭載され、全体的に消費電力を削減しながらネットワーク性能を最大 5 倍まで向上させる、業界実証済みの R-IN エンジンを利用しています。

出典:RZ/N1

RZ/Nは、産業用マルチプロトコルの実装が簡単に可能なデバイスです。

マルチプロトコルとは

マルチプロトコルとは、複数の無線プロトコルに対応しており、それらを切り替えながら使用できる方式のこと。

RZ/Nは、コアとして以下を搭載しています。

  • Cortex-A7
  • Cortex-M3(R-INエンジン)

RZ/Nは、メインのコアとしてCortex-A7を搭載しているほか、Cortex-M3で構成された、産業イーサネット通信用アクセラレータである「R-INエンジン」を搭載しています。

R-INエンジンとは

R-INエンジンとは、ルネサス製の産業イーサネット通信用アクセラレータ。リアルタイムOSアクセラレータ、イーサネットアクセラレータを統合している。これにより、産業用イーサネット通信で必要とされるリアルタイム性や、高精度の通信制御が可能となる。

RZ/N1Dシリーズの特長

RZ/N1Dの特長は、以下の通りです。

  1. デュアルコアCortex-A7を搭載
  2. 最大5つのEthernetポートを搭載
【特長1】デュアルコアCortex-A7を搭載

RZ/N1Dは、500MHzで動作するデュアルコアなCortex-A7を搭載しています。

デュアルコアとは

デュアルコアとは、マルチコアの種類の一つ。マルチコアとは、1つのプロセッサの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。デュアルコアは、コアを2つ内蔵したマルチコアを指す。

マルチコアについては、以下の記事をご覧ください。

組込みにおけるマルチコア、マルチコアプロセッサとは?種類・定義・特徴をわかりやすく解説

【特長2】最大5つのEthernetポートを搭載

RZ/N1Dは、最大5つのEthernetポートを搭載しています。

Ethernet(読み方:イーサネット)とは

Ethernetは、同期式のシリアルインターフェースの1つ。LAN(Local Area Network)の標準規格であり、企業のオフィス内ネットワークや家庭内のネットワーク接続に広く用いられています。

以上の特長から、RZ/N1Dは、ハイエンドな製品向けです。PLCやネットワークスイッチなどの産業用ネットワーク機器に最適なデバイスです。

RZ/N1Sシリーズの特長

RZ/N1Sの特長は、以下の通りです。

  1. シングルコアCortex-A7を搭載
  2. 12×12mmの小型LFBGAパッケージ
  3. 6MBのオンチップSRAM
【特長1】シングルコアCortex-A7を搭載

RZ/N1Sは、デュアルコアのRZ/N1Dに対し、シングルコアのCortex-A7を搭載しています。

シングルコアとは

シングルコアとは、コアを1つだけ内蔵したプロセッサのこと。シングルコアは、通常マルチコアと対比する文脈において使われる言葉。

シングルコアについては、以下のページをご覧ください。

組込みにおけるシングルコア、シングルコアプロセッサとは?意味・定義・特徴をわかりやすく解説

また、マルチコアとシングルコアの違いについては、以下のページをご覧ください。

シングルコアとマルチコアの違いは何ですか?

【特長2】12×12mmの小型LFBGAパッケージ

RZ/N1Sは、12×12mmの小型LFBGAパッケージ設計です。

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)とは

人間と機械が情報をやりとりするための手段や道具の総称。コンピュータにおけるHMIは「ユーザーインターフェース(UI)」と呼ばれることが多い。

【特長3】6MBのオンチップSRAM

RZ/N1Sは、6MBのオンチップSRAMを搭載しています。このため、小容量の外付けメモリは必要ありません。

つまり、RZ/N1Sを使用する場合は、外付けメモリを必要とするプロセッサを使用する場合に比べて、コンパクトな製品設計が可能になる、ということです。

以上の特長から、RZ/N1Sは、スペースが限られる産業用機器に最適なデバイスです。小型のPLCやHMI等に活用できます。

RZ/N1Lシリーズの特長

RZ/N1Lの特長は、以下の通りです。

  • EtherCATとSercosⅢのスレーブ専用H/Wを内蔵
【特長1】EtherCATとSercosⅢのスレーブ専用H/Wを内蔵

RZ/N1Lは、EtherCATとSercosⅢのスレーブ専用H/Wを搭載しています。

以上の特長から、RZ/N1Lは、幅広いプロトコルの対応が可能な、ローエンド製品向けのデバイスです。

RZ/N1D、RZ/N1S、RZ/N1Lの特長を纏めると、以下の通りです。

ポイント
  • RZ/N1D:ハイエンドな産業用機器向け
  • RZ/N1S:スペースが限られる産業用機器向け
  • RZ/N1L:ローエンドな産業用機器向け

RZ/Nシリーズの入手方法

RZ/Nシリーズは、下記のルネサスの特約店・取扱店や、オンラインショップなどで購入できます。

RZ/Nシリーズの開発環境

RZ/Nシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • IAR Embedded Workbench

RZ/Nシリーズの評価ボード

RZ/Nシリーズの評価ボードは、以下の通りです。

搭載CPU 特長 対象
RZ/N-YConnect-It RZ/N1D、RZ/N1S、RZ/N1L 評価ボードだけでなく、JTAGエミュレータや、様々なサンプルソフトウェアを同梱 RZ/N開発が初めての方
IO-Link-Master-Development-Kit RZ/N1S RZ/N1Sの評価ボードのほか、ドキュメント類やプロトコルスタックソフトウェアなどを含んだオールインワン開発キット すぐにRZ/N1Sの開発をスタートしたい方

RZ/N-YConnect-It

RZ/N-YConnect-Itは、ルネサス純正の評価キットです。

RZ/N-YConnect-Itは、評価ボードだけでなく、JTAGエミュレータや、様々なサンプルソフトウェアが同梱されています。

また、RZ/N1 Expansion Boardを使用すると、様々な周辺機能を評価できます。

このためRZ/N-YConnect-Itは、「RZ/N開発が初めて」という方に最適な評価ボードです。

RZ/N-YConnect-Itの価格・購入方法

IO-Link-Master-Development-Kit

IO-Link-Master-Development-Kitは、ルネサス純正の評価キットです。

IO-Link-Master-Development-Kitは、RZ/N1Sの評価ボードのほか、ドキュメント類やプロトコルスタックソフトウェアなどを含んだオールインワン開発キットです。

このためIO-Link-Master-Development-Kitは、「すぐにRZ/N1Sの開発をスタートしたい」という方に最適な評価ボードです。

IO-Link-Master-Development-Kitの価格・購入方法

RZ/Nシリーズの対応OS

RZ/Nシリーズに対応している主なOSは、以下の通りです。

  • Linux
  • ThreadX
  • HW-RTOS
  • eT-Kernel
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard+M(弊社製品)(RZ/N1Sのみ)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。

μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。

ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。

μC3/Standard+Mは、μC3/StandardにAMP型のマルチコア拡張を追加したマルチコアプロセッサ向けのリアルタイムOSです。

μITRON4.0のスタンダード・プロファイルをベースに、AMP型の特徴を活かしたコア毎の処理・リソースの割り当て、コア間連携のためのAPIを追加しています。

ARM Cortex-Aシリーズを中心にマルチコアのMPUをサポートしています。