
STM32ファミリは、STマイクロエレクトロニクス(以下ST社)の汎用マイクロコントローラです。
その中でもSTM32H7シリーズは、Cortex-M7のシングルコアから、M7 + M4のデュアルコアまでラインアップされており、Cortex-M7、Cortex-M4を搭載しています。
STM32H7の製品ライン
製品ライン | 特徴 |
---|---|
STM32H750バリュー・ライン | 最小限の Flash メモリ容量によりコスト効率を高めた STM32H7 バリュー・ライン |
STM32H7B0バリュー・ライン | 最大動作周波数280MHz、最小限のFlashメモリ、大容量の内蔵RAMによりコスト効率を高めたSTM32H7バリュー・ライン |
STM32H742 | STM32H7 シリーズのシングルコア・コスト・パフォーマンス・ライン |
STM32H743/753 | STM32H7 シリーズのシングルコア・スタンダード・ライン |
STM32H7A3/7B3 | 最大動作周波数280MHz、STM32H7シリーズのシングルコア・エントリー・ライン |
STM32H745/755 | STM32H7 シリーズのデュアルコア・高性能インダストリアル・ライン |
STM32H747/757 | STM32H7 シリーズのデュアルコア・グラフィック・ライン |
STM32H7の仕様
STM32H7とは
STM32ファミリの製品ラインアップ
STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。
- 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
- 最大3224 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」例:STM32F2、STM32H7など
- 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」例:STM32F1、STM32F3など
- 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」例:STM32L1、STM32L4など
- マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは
SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。
STM32H7シリーズは、高性能な「ハイパフォーマンスマイコン」に属します。
STM32H7とは
Arm® Cortex®-M7搭載STM32H7シリーズは、Cortex-Mベースのマイクロコントローラ(マイコン)として業界最高のベンチマーク・スコアである、最大1327DMIPS/3224CoreMarkを実現します。(内蔵Flashメモリからのコード実行時)
暗号化 / ハッシュ・プロセッサを内蔵したSTM32H7デバイスは、セキュア・ファームウェア・インストールやセキュア・ブート – セキュア・ファームウェア・アップグレードなどのセキュリティ・サービスをサポートし、新しいアプリケーション・コードをセキュアにインストールできます。
STM32H7のシングルコアおよびバリュー・ラインは、最も一般的なパッケージにおいて、STM32F7シリーズおよびSTM32F4シリーズとピン配置の互換性を有しています。
DMIPSとは
CPUの性能評価で用いる値の一つ。Dhrystone(読み方:ドライストーン)というベンチマークプログラムをベースにしている。
暗号化とは
暗号化とは、データを第三者が解読できないように一定のルールのもとに変換すること。暗号化によって、権限の無い照会や使用からデータを保護できる。
ファームウェアとは
ファームウェアとは、機器の内部に固定的に組み込まれるソフトウェア。ハードウェアのROMなどに組み込まれ、そのハードウェアを制御する。
STM32H7の製品ラインアップ
STM32H7のマイコンは、下記の3つに分類されています。
- デュアルコア・ライン
- シングルコア・ライン
- バリュー・ライン
デュアルコアとは
デュアルコアとは、マルチコアの種類の一つ。マルチコアとは、1つのプロセッサの中に複数のCPUコアを内蔵する技術のこと。デュアルコアは、コアを2つ内蔵したマルチコアを指す。反対に、コアを1つだけ内蔵しているものをシングルコアと言う。
シングルコアとは
シングルコアとは、コアを1つだけ内蔵したプロセッサのこと。シングルコアは、通常マルチコアと対比する文脈において使われる言葉。
マルチコアやシングルコアについては、下記の記事をご覧ください。
STM32H7のデュアルコア・ライン
STM32H7のデュアルコア・ラインは、Cortex-M7およびCortex-M4の2つのコアを内蔵しています。内蔵スイッチング電源(SMPS)を搭載しており、動的電力効率の向上が可能です。
デュアルコア・ラインのラインアップは、下記の通りです。
- STM32H743 / 753
- STM32H742
- STM32H7A3/7B3
STM32H7のシングルコア・ライン
STM32H7のシングルコア・ラインは、Cortex-M7を搭載しています。
シングルコア・ラインのラインアップは、下記の通りです。
- STM32H743 / 753
- STM32H742
- STM32H7A3/7B3
STM32H7のバリュー・ライン
STM32H7のバリュー・ラインは、128KBのFlashメモリを内蔵しており、コスト効率に優れています。
バリュー・ラインのラインアップは、下記の通りです。
- STM32H750
- STM32H7B0
ポイント
- デュアルコア・ライン:2つのコアを内蔵。動的電力効率の向上が可能
- シングルコア・ライン:1つのコアを内蔵
- バリュー・ライン :コスト効率に優れている
STM32H7シリーズの入手方法
- アクシスデバイス・テクノロジー株式会社
- クロニクス株式会社
- 三信電気株式会社
- ネクスティ エレクトロニクス株式会社
- 株式会社レスターエレクトロニクス
- 伯東株式会社
- 株式会社チップワンストップ
- 株式会社マクニカ
- MOUSER ELECTRONICS
STM32H7の開発環境
STM32H7に対応した代表的な開発環境は、以下のとおりです。
- IAR Embedded Workbench for ARM
- Arm Keil MDK
- STM32CubeIDE
- SW4STM32
- Embedded Studio
STM32H7評価ボード
STM32H7評価ボードは、下記の3種類あります。
- EVALボード
- Discoveryボード
- Nucleoボード
これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。
EVALボード・Discoveryボード・Nucleoボードの特徴
EVALボード・Discoveryボード・Nucleoボードには、それぞれ次の特徴があります。
EVALボードの特徴
- LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
- STM32H7のほぼ全ての機能が評価可能
Discoveryボードの特徴
- EVALボードに比べて安価
- 実装されているデモサンプルが豊富
- STM32H7単体評価に最適
Nucleoボードの特徴
- Discoveryに比べて安価
- Arduino互換のPinヘッダーを搭載
- メーカーズなどのプロトタイプ向け
以上のように、デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL、STM32H7の単体評価をしたい場合はDiscovery、Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleoを選択します
STM32H7に対応したEVALボード
STM32H7が評価できるEVALボードは、下記の5種類です。
搭載CPU | データシート | |
---|---|---|
STM32H743I-EVAL | STM32H743XI | STM32H743I-EVALのデータシート |
STM32H747I-EVAL | STM32H743XI | STM32H747I-EVALのデータシート |
STM32H753I-EVAL | STM32H753XI | STM32H753I-EVALのデータシート |
STM32H757I-EVAL | STM32H757I | STM32H757I-EVALのデータシート |
STM32H7B3I-EVAL | STM32H7B3LI | STM32H7B3I-EVALのデータシート |
STM32H7 Nucleoボード
STM32H7が評価できるNucleoボードは、下記の6種類です。
搭載CPU | データシート | |
---|---|---|
NUCLEO-H743ZI | STM32H743ZI | NUCLEO-H743ZIのデータシート |
NUCLEO-H745ZI-Q | STM32H745ZI | NUCLEO-H745ZI-Qのデータシート |
NUCLEO-H753ZI | STM32H753ZI | NUCLEO-H753ZIのデータシート |
NUCLEO-H755ZI-Q | STM32H755ZI | NUCLEO-H755ZI-Qのデータシート |
NUCLEO-H7A3ZI-Q | STM32H7A3ZI | NUCLEO-H7A3ZI-Qのデータシート |
STM32H7の対応OS
STM32H7に対応しているOSは以下とおりです。
- ThreadX
- embOS
- embOS-MPU
- embOS-safe
- UCT μT-Kernel
- TOPPERS-Pro/ASP
- TOPPERS-Pro/HRP2
- FreeRTOS
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard(弊社製品)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。
μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。
高性能リアルタイム処理向けRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standard」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Standardは、μITRON4.0のスタンダードプロファイルをベースに、32/64ビットプロセッサが搭載された組込みシステム向けのRTOSです。
μC3/Standardは、高性能プロセッサがより高度なリアルタイム制御に耐えられるよう、割込み禁止時間を極力なくし、割込み応答性を最重要課題として設計したRTOSです。
ARM Cortex-Aシリーズ、ARM Cortex-Rシリーズだけでなく、高性能な ARM Cortex-MやRenesas RXシリーズにも対応しています。
STM32H7とμC3/Compactの導入事例
- システムインテグレーター製 指静脈認証モジュール製品
など