MicrochipのSAM3Xシリーズとは?仕様・機能・評価ボード・開発環境・対応OSを紹介

SAM3Xシリーズは、Microchipのマイクロコントローラです。SAM3Xシリーズは、Cortex-M3を搭載し、最大84MHzで動作します。SAM3Xシリーズは、産業用オートメーションや医療機器などに適しています。

SAM3Xシリーズの製品ラインアップ

SAM3Xシリーズの製品ラインアップは、以下の通りです。

  • ATSAM3X8EA-CU
  • ATSAM3X8EA-AU
  • ATSAM3X8CA-CU
  • ATSAM3X8CA-AU
  • ATSAM3X4EA-CU
  • ATSAM3X4EA-AU
  • ATSAM3X4CA-CU
  • ATSAM3X4CA-AU

SAM3Xシリーズの仕様

CPUコア Cortex-M3
最大CPU速度(MHz) 84
最大フラッシュ(KB) 2×256
最大SRAM (KB) 100
温度範囲 -40〜85
動作電圧範囲(V) 1.62から3.6
ペリフェラル(周辺機器)
  • メールボックスを8個備えたデュアルCAN2.0B
  • 専用のDMAを備えたEthernet MAC 10/100
  • USB 2.0 HSデバイス/ミニホスト(PHY内蔵)
  • HS SD/SDIO/MMC, USART, SPI, I2S,I2C

SAM3Xシリーズとは

SAM3Xシリーズの特徴

マイクロチップテクノロジーSAM3XARM®Cortex®-M3フラッシュベースのマイクロコントローラーは、イーサネット、デュアルCAN、高速USB(HS USB)MiniHost、およびオンチップ物理層(PHY)を備えたデバイスを追加することにより、SAM3ファミリーへの接続性を高めます。デバイスは、合計256kbおよび512kbフラッシュのデュアルバンク構成を備えており、100ピンおよび144ピンのQFPおよびBGAパッケージオプションで利用できます。このアーキテクチャは、高速データ転送をサポートするように設計されており、マルチレイヤーバスマトリックスに加えて、デュアルSRAMバンク、ダイレクトメモリアクセス(DMA)チャネル、およびマルチタスク操作をサポートするアプリケーション用のペリフェラルDMAコントローラー(PDC)が含まれています。SAM3Xシリーズは、産業用組み込み市場、住宅およびビルオートメーション、スマートグリッド、産業用オートメーションのネットワーキングアプリケーションに最適です。

原文は、以下の通りです。

Microchip Technology SAM3X ARM® Cortex®-M3 Flash-Based Microcontrollers bring more connectivity to the SAM3 family by adding Ethernet, dual CAN and high-speed USB (HS USB) MiniHost and device with on-chip physical layer (PHY). Devices feature a dual-bank configuration of 256kb and 512kb Flash total and are available in 100-pin and 144-pin QFP and BGA package options. The architecture is designed to support high-speed data transfers and includes a multi-layer bus matrix plus dual SRAM banks, direct memory access (DMA) channels and peripheral DMA controller (PDC) for applications supporting multi-task operations. The SAM3X series is ideal for networking applications in the industrial embedded market and in home and building automation, smart grids and industrial automation.

出典:Microchip Technology SAM3X ARM® Cortex®-M3 Flash-Based Microcontrollers

SAM3Xシリーズは、Cortex-M3を搭載したマイコンです。最大84MHzで動作します。

SAM3Xシリーズの特長は、以下の通りです。

  1. 接続および通信用周辺モジュールを豊富に内蔵
  2. 安全およびセキュリティ機能

【特長1】接続および通信用周辺モジュールを豊富に内蔵

SAM3Xシリーズは、豊富なペリフェラル(周辺機器)を搭載しています。

SAM3Xシリーズのペリフェラル(周辺機器)は、以下の通りです。

  • メールボックスを8個備えたデュアルCAN2.0B
  • 専用のDMAを備えたEthernet MAC 10/100
  • USB 2.0 HSデバイス/ミニホスト(PHY内蔵)
  • HS SD/SDIO/MMC, USART, SPI, I2S,I2C
  • SRAM、PSRAM、NORフラッシュ、エラーコード訂正(ECC)機能付
  • NANDフラッシュをサポートする16ビット外部バス インターフェイス

出典:SAM3Xマイクロコントローラ ファミリ

【特長2】安全およびセキュリティ機能

SAM3Xシリーズは、以下の高いセキュリティ機能を有しています。

  • ECC付きフラッシュメモリによるエラー検出機能
  • デュアルバンクフラッシュによる信頼性の高いファームウェアアップデート
  • 独立型ウォッチドッグ、クロック障害検出
  • 真性乱数生成器(TRNG)

以下、それぞれ詳しく解説してきます。

ECC付きフラッシュメモリによるエラー検出機能

SAM3Xシリーズは、ECC機能付きのフラッシュメモリを搭載しています。

フラッシュメモリとは

フラッシュメモリとは、記憶装置の1つであり、電源を切っても記憶内容が維持される、不揮発性の半導体メモリ・ROM。本来、ROMは、データの消去や書き込みができないが、フラッシュメモリは、例外的にデータの消去や書き込みができるROM。

フラッシュメモリ(フラッシュROM)とは?定義・意味・特徴をわかりやすく解説

ECCとは、「誤り検出訂正」を意味するError Correction Codeの略です。エラーを検出し、修正する機能のことです。これにより、信頼性を高めています。

デュアルバンクフラッシュによる信頼性の高いファームウェアアップデート

SAM3Xシリーズは、デュアルバンクフラッシュを搭載しています。

デュアルバンクフラッシュとは

フラッシュメモリが2つ備わった状態のこと

デュアルバンクフラッシュ機能により、一方のフラッシュメモリを実行(読み出し)している間、他方のフラッシュメモリを用いて消去や書き込みが可能になります。

また、デュアルバンクフラッシュ機能により、一方のフラッシュメモリに前のバージョンのファームウェアを残しながら、他方のフラッシュメモリを使用してファームウェアをアップデートできます。

このため、信頼性の高いファームウェア・アップデートが可能です。

独立型ウォッチドッグ、クロック障害検出

SAM3Xシリーズは、ウォッチドッグや、クロック障害検出機能を搭載しています。

ウォッチドッグ(ウォッチドッグタイマ)とは

ウォッチドッグ(ウォッチドッグタイマ)とは、システムに異常が発生した際に、プログラムを終了させる機能のこと。

SAM3Xシリーズのウォッチドッグは、タイマーのクロックがマイコンのクロックとは分かれている、独立型ウォッチドッグです。このため、何らかの理由でマイコンのクロックが停止した場合でも、ウォッチドッグは独立して動作できます。

このため、SAM3Xシリーズは、高精度な異常検出機能を担保しています。

真性乱数生成器(TRNG)

SAM3Xシリーズは、真性乱数生成器(TRNG)を搭載しています。

真性乱数生成器(TRNG)とは

真性乱数生成器(TRNG: True Random Number Generator)は、物理現象のランダム性を利用して乱数を生成する回路・機器のこと。

真性乱数生成器(TRNG)は、暗号鍵の生成などの乱数生成に役立ちます。

SAM3Xシリーズでは、ソフトウェア側ではなくハードウェア側で実行できるため、暗号処理を高速に行えます。

以上の豊富なセキュリティ機能により、信頼性が要求されるアプリケーションにも適したデバイスです。

SAM3Xシリーズの使い方(アプリケーション)

SAM3Xシリーズは、以下のアプリケーションに適しています。

  • ビル/ホーム オートメーション
  • 産業用オートメーション
  • M2M(Machine-to-Machine)
  • テストと計測
  • 医療
  • スマートグリッド

出典:SAM3Xマイクロコントローラ ファミリ

SAM3Xシリーズの入手方法

SAM3Xシリーズのマイコンは、Microchipの正規販売店で購入できます。

SAM3Xシリーズの開発環境

SAM3Xシリーズに対応した代表的な開発環境は、以下の通りです。

  • IAR Embedded Workbench for ARM
  • Atmel Studio
  • MDK-ARM

SAM3Xシリーズの評価ボード

SAM3Xシリーズの評価ボードは、以下の通りです。

ボード 搭載マイコン 特徴 対象 データシート
Flip&Click SAM3X AT91SAM3X8E 2つのmicroUSBソケット・4つのLEDを搭載、Arduino IDEに対応 Arduinoを使って評価したい方

Flip&Click SAM3Xは、MikroElektronika製のSAM3X評価ボードです。AT91SAM3X8Eを搭載しています。

Flip&Click SAM3Xは、2つのmicroUSBソケットを搭載しています。片方は、プログラミング用であり、もう片方は、USBホストやUSBデバイス用です。また、テスト用に使用できる4つのLEDを搭載しています。

Flip&Click SAM3Xは、Arduino IDEに対応しており、簡単に開発できます。プログラム作成からコンパイル、書き込みまでをArduino IDEで行えます。

Arduino(読み方:アルデュイーノ)

Arduinoは、電子工作用プラットフォーム。初心者にも扱いやすいのが特徴。

このためFlip&Click SAM3Xは、「Arduinoを使って評価したい」という方に最適な評価ボードです。

Flip&Click SAM3Xの価格・購入方法

SAM3Xシリーズの対応OS

SAM3Xシリーズに対応しているOSは以下のとおりです。

  • FreeRTOS
  • μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)

弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介

マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」

μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。

μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。

小さいフットプリント
マイコンの小さなROM/RAMのみで動作するように最適化された最小2.4Kbyteのコンパクトなカーネル。メモリ容量が小さい安価なデバイスを使用する事ができます。
μC3/Configurator付属
選択・設定するだけでベースコードが生成できるコンフィギュレーションツール。開発時間の大幅な短縮や、コーディングミスの減少が可能。RTOSの初心者でも簡単に開発をスタートすることができます。
豊富なCPUサポート
業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。CPUの選択肢を広げ、機会費用を抑える事ができます。業界随一のCPUサポート実績があり、技術サポートも充実しています。ご使用予定のデバイスで直ぐに開発着手が可能で、ご質問に対して24時間以内の1次回答を徹底しています。
省電力対応
デフォルトで省電力機能がついているため、システム全体の省電力に貢献します。

詳しい資料をご希望の方は、下記より製品ガイドをダウンロードしてください。

資料ダウンロード(無料)

μC3のライセンスの種類・詳細

ライセンスの種類

ライセンスの種類は3つあります。

  • 研究開発用プロジェクトライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス
  • プラットフォームライセンス

研究開発用プロジェクトライセンス

研究開発用プロジェクトライセンスは、研究開発のみ可能なライセンスです。ライセンス購入時の段階で、製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めです。

研究開発用プロジェクトライセンスのライセンス費用は、このあとご紹介する開発量産用プロジェクトライセンスの60%の価格です。

有償の保守契約に加入中の場合、開発量産用プロジェクトライセンスのライセンス費用の40%オフの価格でアップグレードが可能です。

開発量産用プロジェクトライセンス

開発量産用プロジェクトライセンスは、研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンスとなります。開発量産用プロジェクトライセンスの対象製品の範囲には、1種類の製品型番だけでなく、その製品ファミリ(派生機種)が含まれます。

有償の保守契約に加入中の場合、プラットフォームライセンスのライセンス費用との差額でアップグレードが可能です。

プラットフォームライセンス

プラットフォームライセンスは、プロジェクトライセンスの対象範囲を広げたライセンスです。プラットフォームライセンスの対象製品は、1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリが範囲となります。サイトライセンスではございません。

※弊社のライセンスはプロジェクトライセンスの形式を採っております。ご購入時に該当プロジェクトの名称をご登録頂く必要があり、その際、「計測機器」などの抽象的な名称ではなく、具体的な名称を頂戴しております。

お客様のご要望をお聞きした上で適切な範囲を設定させて頂きますので、先ずは、担当営業にご相談下さい。

ポイント
  • 研究開発用プロジェクトライセンス:製品化まで見えていない場合や、フィジビリティスタディの場合にお勧めなライセンス
  • 開発量産用プロジェクトライセンス:研究開発から量産販売までが可能な標準的なライセンス
  • プラットフォームライセンス   :1種類の製品ファミリだけでなく、複数の製品ファミリを範囲とするライセンス

ライセンスの詳細

  • ライセンス費用の金額・計算方法:ライセンス購入時の固定の一括払いのみでご使用いただけます
  • 開発人数制限 :無(ただし同プロジェクト内)
  • 提供形態 :ソースコード
  • 使用範囲 :定義されたプロジェクト内
  • 使用CPU :型番固定ではなくCPUシリーズ(例:STM32F4シリーズ)
  • μC3/ConfiguratorはCPUシリーズ毎に用意されています

ライセンスの価格などの詳細については、下記よりプロダクトガイドをダウンロードしてご覧ください。

資料ダウンロード(無料)

保守について

製品定価には契約日の翌月1日から6ヶ月分の無償保守が含まれています。その後、有償で保守を継続することが可能です。

また、年間保守費用は製品定価の40%になります。

無償保守期間終了後、継続して有償保守サービスにご加入いただいた場合は、製品定価の20%になります。(ただし、初年度分の保守とライセンスをセットで購入された場合は、初年度分に限り製品定価の15%になります。)

*研究開発用プロジェクトライセンスの保守費用は開発量産用プロジェクトライセンスの定価の20%になります。

保守サービスには以下が含まれています。

  • メールによる技術サポート(1営業日以内に1次回答)
  • 製品の無償バージョンアップ