
STM32ファミリはSTマイクロエレクトロニクス(以下ST社)の汎用マイクロコントローラです。
その中でもSTM32L4シリーズは、仕様に応じて消費電力を最適化できるマイコンです。Cortex-M4を搭載し、超低消費電力と高性能を兼ね備えています。
STM32L4の製品ライン
製品ライン | 特徴 |
---|---|
STM32L4x1 | STM32L4シリーズのアクセス・ライン |
STM32L4x2 | STM32L4シリーズで水晶発振子レスUSB搭載ライン |
STM32L4x3 | STM32L4シリーズで水晶発振子レスUSB & LCDドライバ搭載ライン |
STM32L4x5 | STM32L4シリーズでUSB OTG搭載ライン |
STM32L4x6 | STM32L4シリーズでUSB OTG & LCDドライバ搭載ライン |
STM32L4の仕様
STM32L4とは
STM32ファミリの製品ラインアップ
STM32ファミリのマイコンは、主に下記の5つに分類されています。
- 幅広いアプリケーションの開発を容易にする「マイクロプロセッサ」例:STM32MP1
- 最大3224 CoreMarkの高性能を実現した「ハイパフォーマンスマイコン」例:STM32F2、STM32H7など
- 汎用マイコンである「メインストリームマイコン」例:STM32F1、STM32F3など
- 消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」例:STM32L1、STM32L4など
- マイコンと無線トランシーバを集積したSoC「ワイヤレスマイコン」例:STM32WB、STM32WL
SoC(読み方:エスオーシー、ソック)とは
SoCとは、プロセッサの種類の一つ。SoCとは、システムに必要なあらゆる機能を1つのチップ上に搭載したもの。SoCは、「システムを一つのチップ上に載せる」を意味する「System on a Chip」の略。システム全体をチップ上に搭載することで、小型化が可能になるというメリットがある。また、システムの内部接続により消費電力も抑えられる。
STM32L4シリーズは、消費電力を抑えた「超低消費電力マイコン」に属します。
STM32L4とは
STM32L4シリーズは、ARM® Cortex®-M4をベースとし、仕様に応じて柔軟に消費電力を最適化するFlexPowerControlを特徴とする超低消費電力プラットフォームに基づいています。
最大1MBのFlash(デュアルバンク)メモリと最大320KBのSRAMを搭載し、DSP命令と浮動小数点演算器(FPU)およびST独自のFlashアクセラレータであるARTアクセラレータTMにより最大80MHzで動作するCortex-M4(FPU付き)の高い電力効率を引き出します。
また、STM32L4シリーズは、消費電力と処理要求のバランスをとるための動的電圧スケーリング、充実したアナログ機能、ストップモードで利用可能な低電力周辺機器(LP UART、LPタイマ)、安全性やセキュリティ機能などが搭載されています。
フラッシュメモリ(フラッシュROM)とは
フラッシュメモリとは、記憶装置の1つであり、電源を切っても記憶内容が維持される、不揮発性の半導体メモリ・ROM。本来、ROMは、データの消去や書き込みができないが、フラッシュメモリは、例外的にデータの消去や書き込みができるROM。
SRAM(読み方:エスラム)とは
SRAMとは、半導体メモリの一種。データの読み出し・書き込みが行えるRAMの一つ。RAMと同様、電源を切るとデータが失われる性質(揮発性)を持つ。
DSP(読み方:ディーエスピー)とは
DSP(デジタルシグナルプロセッサ・Digital Signal Processor)とは、積和演算の拘束な処理に特化したプロセッサのこと。主にオーディオや画像の信号処理や、モータの制御、計測、遠隔通信などの処理において使用される。
UART(ユーアート)とは
UART(読み方:ユーアート)は、シリアルインターフェースの一つ。「非同期式受信機/送信機」を意味する「Universal Asynchronous Receiver/Transmitter」の略。UARTは、非同期式(調歩同期式)シリアル通信とパラレル通信の変換を行う。
上記の通り、STM32L4は消費電力に対する高い柔軟性を持っています。これによりSTM32L4は、設計時に課題となる性能と消費電力の両立を可能にします。
STM32L4のリファレンスマニュアルは、下記をご覧ください。
STM32L4シリーズの入手方法
STM32L4シリーズのマイコンは、ST社の販売代理店や下記のオンラインショップなどで購入できます。
- アクシスデバイス・テクノロジー株式会社
- クロニクス株式会社
- 三信電気株式会社
- ネクスティ エレクトロニクス株式会社
- 株式会社レスターエレクトロニクス
- 伯東株式会社
- 株式会社チップワンストップ
- 株式会社マクニカ
- MOUSER ELECTRONICS
STM32L4の開発環境
STM32L4に対応した代表的な開発環境は、以下のとおりです。
- IAR Embedded Workbench for ARM
- Arm Keil MDK
- STM32CubeIDE
- SW4STM32
- Embedded Studio
- FreeRTOS
STM32L4評価ボード
STM32L4評価ボードは、下記の3種類あります。
- EVALボード
- Discoveryボード
- Nucleoボード
これらは、ST社から提供される純正の評価ボードであり、USBケーブルやPCを用意するだけで、簡単・安価に開発をスタートできます。
EVALボード・Discoveryボード・Nucleoボードの特徴
EVAL・Discovery・Nucleoには、それぞれ次の特徴があります。
EVALボードの特徴
- LCDやUSBコネクタなどの機能が豊富なため、ボード上で実際にアプリケーションを開発することが可能
- STM32L4のほぼ全ての機能が評価可能
Discoveryボードの特徴
- EVALボードに比べて安価
- 実装されているデモサンプルが豊富
- STM32L4単体評価に最適
Nucleoボードの特徴
- Discoveryに比べて安価
- Arduino互換のPinヘッダーを搭載
- メーカーズなどのプロトタイプ向け
以上のように、デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL、STM32L4の単体評価をしたい場合はDiscovery、Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleoを選択します。
ポイント
- デバイスのフル機能を評価したい場合はEVAL
- STM32L4の単体評価をしたい場合はDiscovery
- Arduino互換ボードを使ったプロトタイプ開発をしたい場合はNucleo
STM32L4に対応したEVALボード
STM32L4が評価できるEVALボードは、下記の1種類です。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
STM32L476G-EVAL | STM32L476ZG | STM32L476G-EVALのデータシート |
STM32L4に対応したDiscoveryボード
STM32L4が評価できるDiscoveryボードは、下記の4種類です。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
32L476GDISCOVERY | STM32L476VG | 32L476GDISCOVERYのデータシート |
32L496GDISCOVERY | STM32L496AG | 32L496GDISCOVERYのデータシート |
P-L496G-CELL01 | STM32L496AG | P-L496G-CELL01のデータシート |
P-L496G-CELL02 | STM32L496AG | P-L496G-CELL02のデータシート |
STM32L4 Nucleoボード
STM32L4が評価できるNucleoボードは、下記の8種類です。
搭載マイコン | データシート | |
---|---|---|
NUCLEO-L412KB | STM32L476VG | NUCLEO-L412KBのデータシート |
NUCLEO-L432KC | STM32L496AG | NUCLEO-L432KCのデータシート |
NUCLEO-L433RC-P | STM32L496AG | NUCLEO-L433RC-Pのデータシート |
NUCLEO-L452RE | STM32L496AG | NUCLEO-L452REのデータシート |
NUCLEO-L452RE-P | STM32L452RE | NUCLEO-L452RE-Pのデータシート |
NUCLEO-L476RG | STM32L476RG | NUCLEO-L476RGのデータシート |
NUCLEO-L496ZG | STM32L496ZG | NUCLEO-L496ZGのデータシート |
NUCLEO-L496ZG-P | STM32L496ZGTP | NUCLEO-L496ZG-Pのデータシート |
STM32L4の対応OS
STM32L4に対応しているOSは以下の通りです。
- ThreadX
- embOS
- embOS-MPU
- embOS-safe
- UCT μT-Kernel
- FreeRTOS
- μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact(弊社製品)
弊社製品「μC3(マイクロ・シー・キューブ)」のご紹介
マイコン向け超軽量カーネルを採用したRTOS「μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compact」
μC3(マイクロ・シー・キューブ)/Compactは、マイコン内蔵の小さなメモリだけで動作するように最適化された、コンパクトなμITRON4.0仕様のRTOSです。
μC3/Compactは、ソースコードに直接コンフィグレーションを行うのではなく、付属のコンフィグレータによりGUIベースでRTOS、TCP/IP、デバイスのコンフィグレーションからベースコードの自動生成まで行います。
STM32L4と弊社製品μC3/Compactの導入事例
- 計測機器メーカー製 出力装置
- 光学機器・電子機器メーカー製 デジタルカメラ
- 電機メーカー製 ネットリモコン
など